1. ギフテッドとは
ギフテッドという言葉はあまり聞き覚えがないかもしれません。
そこでまずはギフテッドがどういったものなのかについて解説していきます。
①天からの贈り物
ギフテッドとは、英語の「gifted」に由来しており、「天賦の才を与えられた人」という意味です。
ギフテッドの人々は平均よりも高い能力を持っており、様々な分野で活躍しています。
ギフテッドについての研究論文(注1)では、ギフテッドの定義を以下のようにまとめています。
・並外れた才能がゆえに高い実績を上げることが可能な子ども
・実際目に見えて優れた成果をあげている子どもだけでなく、潜在的な素養のある子どもも含む
・才能の領域:知的能力全般、特定の学問領域、創造的思考や生産的思考、リーダーシップ、音楽、芸術、芸能、スポーツ
・資格を有する専門家(現在は医師、心理師、教師、芸術やスポーツの専門家等が該当する)による判定が必要
②ギフテッドの特徴
では具体的にどのような子どもがギフテッドの可能性があるのでしょうか。
別のギフテッドに関する研究(注2)ではギフテッドの特徴を以下の通り紹介しています(抜粋)。
生徒様がギフテッドにあてはまるのか確認してみてください。
・幼少期からの並外れた集中力
・年齢の割に数多くの難しい語彙を持ち、複雑な文を構成できる
・幼少期から文字の読み書きを教えなくても自分で学んでしまう
・教えられたことを超えて質問する
・幼少期に空想の友だちがいる。いきいきとした想像力を持つ
2. ギフテッドの生徒様が抱えやすい悩み
「ギフテッドってつまり優秀な人なんだから、ギフテッドは良いことなのでは?」という感想を抱いた方も多いのではないでしょうか。
しかし、ギフテッドであることは良いことばかりではありません。
ギフテッドだからこそ生じる悩みや日々の困りごとはたくさんあります。
そこでギフテッドの生徒様が抱えやすい悩みの代表的なものを3つ紹介していきます。
①周囲とレベルが合わない
ギフテッドの生徒様は知的能力が高く、他の子どもとレベルが合わず、孤立してしまう場合があります。
周囲の会話が幼稚に感じてしまったり、興味関心が合わないだけでなく、勉強や運動が飛び抜けているため近づき難い雰囲気を感じさせてしまい、友達ができずに悩んでしまいます。
そのためなかには面白いと感じない内容でも興味のあるフリをしたり、わざと問題を間違える、失敗する生徒様もいます。
②疲れやすい
ギフテッドの特徴の一つに「過度激動」というものがあります。
過度激動とは日常的に感じる刺激を強烈に感じ取ってしまうことを指します。
具体的には普通の人なら気にならない光や音に対しても、過度に眩しがる、不快に感じてしまったり、「嬉しい」「悲しい」といった感情も激しく感じてしまったりします。
そのため日常生活を送っているだけでも精神的に疲弊してしまうのです。
このようになってしまう原因として、脳の神経細胞の感受性の高さが考えられています。
神経細胞が発達しているため高いパフォーマンスを発揮できる一方で、情報受容の感度が高いため少しの刺激にも過剰反応してしまうのです。
③分かっているのにうまくできない
また、ギフテッドの生徒様は知的能力のばらつきが大きい傾向にあることが研究(注3)によってわかっています。
「言葉を扱う能力」と「目で見た情報を処理する能力」が高いですが、「記憶する能力」と「情報に反応する能力」が平均的な場合が多いです。
そのため授業中には「先生の言っていることは簡単に理解できる」にもかかわらず「授業内容を覚える」「ノートに書き写す」ことが苦手で時間がかかってしまうという事態に陥ってしまします。
もちろん苦手とはいえ、「記憶する能力」と「情報に反応する能力」は平均的か平均以上の力を持っていますが、
「言葉を扱う能力」「目で見た情報を処理する能力」が高い分、
「頭でわかっているけど身体が追いつかない」
|
ことに繋がり能力を十分に発揮できず、ストレスを抱えてしまうのです。
3. 保護者様が抱えやすい悩み
ギフテッドの生徒様は様々な悩みを持ちやすいですが、保護者様も同じで、我が子がギフテッドだからこそ悩んでしまうことがたくさんあります。
そこで次に、ギフテッドの生徒様の保護者様が抱えやすい悩みについて解説していきます。
①育て方がわからない
ギフテッドの生徒様は普通の子どもとは異なる部分があり、一般的な育児書やインターネット上にある育児論が当てはまらない場合があります。
そのため保護者様は育てにくさ、対応の難しさを感じてしまうのです。
また芸術面や運動面に特出した能力がある場合は、その才能をどのように生かしてあげればよいのか、どんなふうに伸ばしてあげればよいのかが分からず、戸惑ってしまう保護者様もいらっしゃいます。
②得意なことと苦手なことの差が激しい
得意なことに関しては素晴らしい成績を残すことができる一方で、苦手なことに関してはとことんできないお子さんが多いです。
知的好奇心の高い生徒様の場合は、自分の好奇心や探求心を満たすことに一生懸命になるため、周囲の目を気にせず、「他人に合わせる」「集団で行動する」ことが苦手な傾向にあります。
この場合、「友だちと仲良くしなさい」「皆で一緒に行動しなさい」と伝えても生徒様にはその意義や必要性が理解できず、生徒様のストレスとなったり保護者様との関係性が悪化したりする可能性もあります。
苦手なことをどのように伸ばしてあげればよいのか、どのように伝えてあげればよいのかは保護者様の大きな悩みの1つなのです。
③周囲からの理解が得られにくい
高い能力をもっているからこそ周囲から理解が得られないという問題もあります。
「○○ちゃんは勉強がすごくできるから心配がなくていいね」「すごい才能を持っているから将来も安心ね」など、生徒様の輝かしい部分だけ注目されてしまい、苦手なこと、難しいことに目を向けられないため、
学校の先生や他の保護者から「この子は問題ない」と、特別な教育支援のニーズがあるにもかかわらず目を向けてもらえないこともあります。
4. ギフテッドの生徒様にしてはいけない声かけと対応
ギフテッドの生徒様はとても繊細で物事を深く考えてしまったり、極端な受け取り方をしてしまうことがあるため、声かけや対応に注意が必要です。
そこでどんなことに気をつければよいのか、3つのポイントを紹介していきます。
①過度に期待する
生徒様の高い能力や才能を長所と捉え、生徒様の活躍を願う気持ちは良く分かります。
子の幸せを願うのは親として自然なことです。
しかし、過度に期待してしまうと、「自分が好きでやっている」ことがいつの間にか「親のためにやる」「褒められるから続ける」ことに変わってしまい、
保護者様から離れた環境で暮らし始めたり、誰にも褒められなくなったりするとやる気を失い、才能を活かすことができなくなってしまう危険性があります。
そのため、過度な期待は避け、功績や結果よりも過程や努力を認め、褒めてあげるとよいでしょう。
②必要以上に「あなたは特別」というメッセージを送る
我が子に特別な才能があるとそれを活かそうとするあまり「あなたは特別なんだから」と声をかけてしまう保護者様は少なくありません。
「あなたは特別なんだから無理に他の子とかかわらなくていい」「あなたは特別だから気にしなくていい」、そんなメッセージを送り続けていると社会性が育たなくなり、
ますます孤立するだけでなく、「特別であること」に悩んでいる場合の生徒様をますます追い詰めることになってしまいます。
非凡な才能があり、もっと才能を伸ばしてあげることで人生が豊かになることは事実です。
ですが生徒様が何を思っているのか、どうしたいのかが一番大切なので、生徒様の気持ちを優先してあげてください。
③外部とのつながりを少なくする
ギフテッドの特性から集団に馴染めないからといって、学校を休ませるのはおすすめしません。
先ほども紹介した通り社会性が育つ機会を奪ってしまうだけでなく、生徒様が学校に行かない間に、クラスメイトの親密性が高まり、生徒様がどんどん輪に入りにくくなってしまうからです。
もちろんどうしても学校が合わず、ストレスを感じてしまうようなら無理に行かせる必要はありませんが、
その代わりにフリースクールや適応指導教室などに行き、社会との関わりを途絶えさせないようにしましょう。
5. 保護者様にできるギフテッドの生徒様への対応方法
最後に保護者様がギフテッドの生徒様にしてあげられるサポートや生徒様への対応方法について紹介していきます。
もちろん生徒様の性格や環境によって異なる点もありますので、参考にしていただき、生徒様に合った方法をとっていただければ幸いです。
①本人のやりたいことは極力やらせてあげる
ギフテッドの生徒様は好奇心が旺盛です。
自分の気になったこと、知りたいことへの熱意は凄まじいものです。
そのため、自分の知的好奇心を制限されてしまうことにストレスを感じてしまいます。
そのため、時間的もしくは経済的に可能な限り生徒様のやりたいことはやらせてあげましょう。
保護者様は一歩離れたところから見守り、助けが必要な時に一緒に解決策を考えてあげるくらいの距離感が丁度いいのです。
②本人の強みと弱みを理解し、周囲に伝えてあげる
よく勘違いされてしまうのですが、ギフテッドの生徒様はいくら難しい問題を解けたり、大人顔負けの語彙力・思考力があったとしても、中身は子どもです。
そのため人間関係でトラブルを起こしたり、周りから誤解されてしまうことが少なくありません。
ですから保護者様が学校の先生をはじめとした生徒様に関わる大人に、生徒様の特性と人柄をしっかりと説明する必要があります。
これがあるのとないのとでは生徒様の過ごしやすさにかなりの差が生まれてしまいます。
「親バカだと思われる」「過保護すぎないか」と心配するかもしれませんが、何も説明せず周囲から嫌われ、馴染めなくなってしまっては元も子もありません。
しっかりと説明してあげてください。
③ギフテッドの集まりに参加してみる
ギフテッドは人口の2%程度だと言われています。
ギフテッドのなかにも種類があり、日常生活の中で生徒様と同じ分野に特出した才能がある人と巡り合うのは難しいでしょう。
そこで活用してもらいたいのが「ギフテッドの自助グループ」です。
自助グループとは、同じ問題や悩みを抱えた人々が集まり、お互いに支え合ったり、励まし合ったりして問題の解決や克服を図ることを目的としたグループです。
ギフテッドの自助グループは全国にたくさんあり、皆さんのお住いの地域にもある可能性が高いです。
もしなくともインターネットが発達した現代ではSNSを通じて情報交換ができます。
生徒様としては悩んでいるのは自分だけじゃないと思うことができるだけでなく、同じレベル同士での会話を楽しむことができます。
保護者様同士でも日々のの困りごとを相談したり、解決策を教え合うことで、気持ちが楽になるなど双方にメリットがありますので、是非参加してみてください。
まとめ
今回はギフテッドについての概要とギフテッドの生徒様とその保護者様の悩み、生徒様へのしてはいけない関わりとしていただきたい対応方法について解説してきました。
才能があることは素晴らしいことであり、将来の可能性が満ち溢れている一方で、ギフテッドだからこその苦悩がたくさんあります。
保護者様が一番の理解者となり、生徒様が子どものうちは環境を整え、社会性を育み、独り立ちしても才能を遺憾なく発揮できるようにサポートしてあげてくださいね。
▼当会では、ギフテッドの生徒様に対応した家庭教師をご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
【脚注】
注1)角谷詩織(2023)これからのギフテッド研究と実践の発展のために
注2)林睦(2017)ギフテッドの概念と日本における教育の可能性
注3) 日高茂暢(2018)知的ギフテッドにおける知的特性と生活適応行動に関する検討ー知能検査WISC-ⅣとVineland-Ⅱ適応行動尺度の関連-