1. 鉄緑会とは?
鉄緑会は、主に中高一貫校向けの生徒を対象とした「東京大学受験指導専門塾」です。
東京と大阪に拠点を持ち、東京の代々木本部は毎年約500名程度の東京大学合格者を輩出することでも知られています。
※この記事では、主に代々木本部のカリキュラム等について紹介しています。
①鉄緑会の特徴
鉄緑会の特徴は東京大学合格に向けた「英語・数学(数Ⅲ以外)の早期完成」と「ハイレベルな学習環境」です。
カリキュラムでは、先取り学習と多量の宿題を通して、中学生のうちに高校範囲を一周勉強します。
そして、高校三年生までに基礎を反復学習することによって完成度を高めています。
鉄緑会は、入塾テストや指定校制度を通して優秀な生徒様が集まりやすい場所です。
さらに、講師は鉄緑会出身の東京大学や国公立大医学部などに在籍している現役学生が中心のため、早くから東京大学を意識しながら学習を進める生徒様が多いです。
そうした難関大学を目指す空気がハイレベルな学習空間を支えていると言えるでしょう。
②鉄緑会のカリキュラム
中学1年生から高校3年生までの6年間で東京大学に余力を持って合格するためのカリキュラムです。
先取学習によって英語と数学を中学時代から反復して積み重ねて基礎を固めていき、高2以降は演習を繰り返して東京大学合格レベルの実践力を磨いていくシステムです。
(1)授業科目
高1までは英語と数学のみ、高2からは国語、地歴、理科が加わります。
(2)授業時間
1科目週1回、3時間の授業です。ほぼ毎回30分~1時間程度の延長があります。
(3)宿題等
毎週の宿題、課題として、授業の復習に加えて問題集20問以上などを課されます。
そのため、毎週の勉強に10時間程度は見込んだ方が良いと言われています。
(4)各学年の授業進度(英語と数学)
中学1年生 | 英語:中学範囲の英文法を学習 数学:中1~中3で学習する範囲を学習 |
中学2年生 | 英語:中学範囲の英文法をもとに英文読解や英作文の練習(基礎英文法の完成) 数学:高次方程式などを含む数IA~数Ⅱの範囲を学習 |
中学3年生 | 英語:仮定法、過去完了などを含め高校範囲の英文法を学習 数学:三角関数、数列、微分積分、ベクトルなど、高校までの数ⅠAⅡBをほぼ網羅して学習 |
高校1年生 | 英語、数学ともこれまでの内容を再度1から学習し、完成度を高めます。 また、理系志望者に関しては、高1から数Ⅲを受講できます。 |
高校2年生 | 演習中心の授業で再度これまでの学習内容の定着を図ります。 高2終了時までに東京大学入試レベルが解けるようになることが目標とされています。 |
高校3年生 | 東京大学の実際の試験形式も使いながら演習を繰り返していきます。 英数以外の教科に比重を置き、各科目バランスよく学力を高めていきます。 |
③入塾までのフロー
鉄緑会は入塾テストの結果、入塾が認められます。
例外として、筑波大駒場、開成、桜蔭など鉄緑会が指定した学校に通う学生は、中学1年生の4月入学に限り入塾テストが免除されます(指定校制度)。
詳細は、以下の記事で紹介していますのでご参考ください。
▼入塾テスト対策の詳細は以下ページをご覧ください
④クラス分けの仕組み
英語、数学は成績によるクラス分けが存在します。
中学1年生~高校2年生はレギュラーコースとオープンコースの2つのコースに分かれており、それぞれ曜日別に複数クラスが設置されています。
オープンコースへの入塾が基本であり、1年に2回の校内模試の結果が優秀であればレギュラーコースを選択できるようになるようです。
レギュラーコースの目安は、成績の上位1割程度と言われており、ハイレベルと言われる鉄緑生の中でもさらに上位層が集まっています。
高校2年生の12月の校内模試で高校3年生時のクラスが決まり、平均より上がAクラス、下がBクラスとしてクラス分けされます。
以後は大学入試までそのクラスで固定されるので、この模試は塾生の間でも非常に重要視され、クリスマス模試とも呼ばれているようです。
⑤使用している教材
確認シリーズや問題集と呼ばれる鉄緑会オリジナルの教材を使用しています。
また、クラスによって担当講師がオリジナルで作成したプリントなども使っているようです。
英単語学習用には、オリジナルで作成された鉄壁と呼ばれる英単語帳を使用しています。
単語、熟語の掲載数が非常に多くまとまっていることや豊富なイラスト、単語テストなどもついており、鉄緑会以外の受験生からも定評のある単語帳です。
⑥料金形態
鉄緑会は、学年やコース、取る科目によって料金が細かく分かれます。
以下例は目安の料金として参考にしていただき、詳細は鉄緑会様にお問合せください。
(1)オープンコースの中学生が英語のみ受講する場合の目安
入会金:約25,000円
教材費(6か月):約13,000円
授業料(月謝):1教科約16,000円
年間で約20万円程度の見込みです。
(2)高3生が英語、数学、物理、古典を受講する場合の目安
入会金:約25,000円
教材費(6か月):約25,000円
授業料:以下のA群、B群から受講する科目数に応じた組み合わせで月謝が決まります。
※A群:英語・数学・物理・化学・生物・日本史・世界史・地理
※B群:現代文・古典
この例ですと、A群3科目、B群1科目の選択となり、その場合月謝は約70,000円です。 年間の見込みは、約70万円程度といったところになります。
⑦講師
鉄緑会の講師は、鉄緑会出身の東京大学や医学部に通っている大学生が多いです。
自身も通っていたため鉄緑会のカリキュラムを熟知しており、年齢が近いことから質問や相談しやすい環境を整えております。
クラスによって担当が異なるので、校内模試などに向けてオリジナルの教材を作成している講師もいれば、説明がわかりにくいと言われてしまう講師もいるようです。
2. 鉄緑会のメリット・デメリット
①鉄緑会に通うメリット
(1)学習範囲の先取りができる
英語、数学は中学生のうちに高校範囲を1周するカリキュラムのため、学校の進度より早いことが多いです。
学校の授業が物足りない、もっと先を進めていきたい人にとってはメリットと言えます。
(2)学習習慣の定着が期待できる
鉄緑会は、毎回復習テストを実施し、宿題の確認もチェックされます。
授業の復習と宿題を通して、学習習慣を定着させることができるのは、大学受験に向けて大きなメリットです。
(3)ハイレベルな学習環境
入塾テストを突破した学生や指定校(東京大学合格者を多数輩出している名門校、中高一貫校)の学生が集まる環境はハイレベルな学習環境です。
特に、校内模試で選抜されたレギュラーコースは、誰もが毎日当たり前のように勉強し、意識の高い生徒が集まっています。
周りと一緒に刺激を受けながら勉強していきたい生徒様には合っていると言えるでしょう。
②鉄緑会に通うデメリット
(1)鉄緑会が生活の中心になる
毎週の宿題や授業の復習等を考えると、自分での勉強時間を毎週1科目5~10時間以上は取る必要があると言われています。
部活や趣味などと両立することが難しく、苦戦している生徒様が多い印象です。
(2)テキストや課題の量が多い
鉄緑会は、多数の問題を解いて知識を定着させる方針です。
テキストの問題も数が多いため、多量の問題を解く方針が合わない生徒様にとってはデメリットになるでしょう。
(3)講師の質がまばら
鉄緑会の講師は学生が中心のため、教えることのプロではありません。
授業の質が低く、わかりにくいと感じる生徒様も少なくないようです。
(4)入会のタイミングが難しい
6年間で東京大学合格までのカリキュラムを組んでいるため、入会のタイミングによっては授業進度と合わない可能性があります。
たとえば、高3から入る場合、これまでの授業を受けてきた前提で東京大学形式の演習中心の授業となるため、基礎知識が身に付いていない場合、ついていくのが難しいと感じるかもしれません。
▼鉄緑会についていけない際の対策の詳細は以下ページをご覧ください
3. 他大手塾との違いは?
大学受験のための塾は鉄緑会以外にもたくさんあります。 この項では、他塾を簡単に紹介したうえで、鉄緑会との違いをまとめました。
①SEGとの違い
SEGは、主に中高一貫校の生徒様を対象にした理数系科目中心の塾です。
6年間一貫したカリキュラムである点は鉄緑会と同じですが、SEGは学ぶ楽しさ・達成する楽しさを経験させたいと標榜しているところが大きな違いです。
そのため、プロの講師による、原理原則から学ぶ授業を特徴としており、宿題の量は少な目と言われています。
他にも英語の多読主義を取っていることが違いの一つです。
中学生の頃から英語の原書をたくさん読むことによって英語力の向上をめざしています。
鉄緑会と同じ3時間授業ですが、料金設定は少し高めとなっています。
▼SEGについての詳細は以下ページをご覧ください
②平岡塾との違い
平岡塾は、渋谷に拠点をおく、英語のみの単科塾です。
英語は、日本語を通じてマスターすべきものという方針で授業を展開しており、英文法の理解に特に重点を置いています。
毎回の宿題が非常に多い点は鉄緑会に似ている部分ですが、授業内容には古めの文法知識なども含まれることがあるようです。
床に座ってローテーブルで授業を受ける点が大きな特徴、かつ鉄緑会との違いです。
飲食もでき自由な雰囲気で授業を受けることが可能なようです。
また、高2までは学力別のクラス編成は行わず高3から大学入試に特化したクラス分けをしていることも鉄緑会との違いと言えます。
▼平岡塾についての詳細は以下ページをご覧ください
③JPREPとの違い
JPREP(斎藤塾)は渋谷や自由が丘、横浜などに拠点をもち、世界のトップ大学に通じる英語力の習得をめざす英語塾です。
話す・聴く・読む・書く・考えるの5技能の習得にこだわりを持っており、実践的な英語力の習得を目的としております。
鉄緑会は東京大学への合格を大きな目的ととしているため、その点で違いがあります。
授業では、日本語母語教師、英語母語教師の2人で共同して教えており、ディスカッションなどもあるため、大学入試にとどまらない英語力の養成に重きを置いていると言えるでしょう。
▼JPREPについての詳細は以下ページをご覧ください
④グノーブルとの違い
グノーブルは、中学受験の塾サピックスの大学部門であったNUXUSから独立してできた塾です。
新宿やお茶の水、横浜などに拠点があります。
高1時点で、英語、数学、古文、生物を受講できる点が違いの一つです。
また、少人数制で面倒見が良いことでも知られています。
宿題は1週間に2、3時間程度の分量で鉄緑会に比べると少な目です。
英語の教授法に特徴があり、語源を使った単語学習と頭から訳す直訳式を採用している点で鉄緑会との違いがあります。
▼グノーブルについての詳細は以下ページをご覧ください
⑤東進・河合塾・駿台・代々木ゼミナール等の大手塾との違い
いわゆる大手の予備校・塾は、幅広い生徒様に合うよう、学校の進度と大きく違わないようカリキュラムが組まれています。
通常授業の中で大学入試全般に通用する力を養成し、各大学に向けた対策は季節講習や冠コース(志望大学の名前がついたコース)などで行うことが多いので、東京大学に向けて一貫したカリキュラムが組まれている鉄緑会とは異なる点です。
また、大手予備校や塾は、講師や担任が大学入試のプロのことが多いです。
豊富なデータに基づく模試や判定を実施しているため、いろいろな大学の対策、進路指導が可能となっている点でも違いがあると言えます。
設備面での違いとしては、鉄緑会は自習室が高3生のみしか使用できませんが、大手の塾や予備校は学年にしばられず使用できることが多いです。
4. 鉄緑会に通わせた場合、保護者としてどのようなフォローが必要になるか
鉄緑会に通わせた場合のメリットやデメリットもふまえて、生徒様が勉強を続けていくために必要なフォローを説明します。
①勉強時間の確保をフォロー
鉄緑会は宿題を含めた課題の量が非常に多いです。
毎週きちんとこなしていくためには、一定の学習時間が必要になります。
生徒様が勉強時間をもてているか、確認して勉強の継続をフォローしていくことが重要です。
特に、部活動や遊び、趣味などと両立する場合、どうしても生徒様一人だけで自発的に勉強に集中するのが難しいことがあります。
勉強時間が確保できていないときなどは、その原因を確認のうえ生徒様と話し合っていく必要があります。
②モチベーションの維持
やる気があって入塾しても、そのあとモチベーション低下などで結局退塾してしまう生徒様もおります。
特に、鉄緑会は優秀な生徒様が集まりがちなので、テストなどで比較されることも多いです。
自分と他人を比べてしまって気落ちしてしまうことも少なくありません。
宿題の出来などで厳しく指導される場合もあるので、ご家庭では優しく見守り、励ましたりほめてあげることで、生徒様を支えてあげることが大切です。
年頃の生徒様の場合、視野が狭くなってしまい鉄緑会以外が見えなくなってしまうこともあるので、ご家庭でのフォローが重要となってきます。
5. 鉄緑会と相性が良いと思われる/悪い可能性があるご家庭様の特徴
これまでの内容をもとに、鉄緑会と相性が良いと思われるご家庭様、相性が悪い可能性があるご家庭様について説明します。 入塾をご検討中の方はぜひご参考ください。
①相性が良いと思われるご家庭様
(1)先取り学習に対応できる方
鉄緑会は高校の分野を中学で学習するので、学校の授業よりハイレベルと感じる生徒様も多いです。
わからないところを質問に行ったり、向上心が強く自分でどんどん先に進みたいと考えている生徒様には合っていると言えます。
(2)周りのハイレベルな環境に適応できる方
学力が高い生徒様が集まっており、授業ではテストの結果などで周りの生徒様と比較されたりすることがあります。
比べられることに抵抗が少ない、または競争心が強くライバルと切磋琢磨したいような生徒様には合っていると言えます。
こういった生徒様は、ある程度自発的に勉強を進めることができますが、どうしても伸び悩んでしまったりする場合もあります。
普段の学習時には優しく見守ってあげ、くじけそうなときに折れないよう、うまく声をかけたり励ましたりといった保護者様のサポートが必要となります。
②相性が悪い可能性があるご家庭様
(1)鉄緑会中心の生活に抵抗がある方
中学校や高校では、学校生活や部活、遊びなどにも目を向けたい生徒様は多いです。
うまく両立ができず、勉強をサボってしまったり惰性で通うだけになってしまう生徒様には相性が良くないと言えます。
(2)周囲と自分を比べてしまう方
ハイレベルな学生が集まる環境で周りと比較されることに耐えられない生徒様には相性が良くないと言えます。
もし鉄緑会に通う場合は、保護者様が話し合ったり、励ましたり、時には?ったりしながら、生徒様の勉強の継続をうまくサポートしてあげてください。
また、鉄緑会のカリキュラムは東京大学合格に向けて英語、数学を早期に完成させるカリキュラムが組まれております。
現状の大学入試ではあまり多くないですが、英語と数学が重視されない大学や海外の大学を早くから検討している生徒様にも相性が良くないと言えるでしょう。
6. 鉄緑会に通っているご家庭様の実際の口コミ・評判
実際に鉄緑会に通っている(通っていた)生徒様、保護者様の口コミなどを紹介します。
①鉄緑会の学習環境に関する口コミ
・やはり、周りと先生のレベルが高いことが一番の利点だと思います。どこを見ても、東京大学や医学部志望しかおらず、普通の環境ではないです。いい意味で。周りに負けたくない、という思いが持てれば勉強が進むと思います。私は、ここで素敵な英語の先生に出会えたことで、英語の成績がとても上がりました。(引用:医学部予備校マニュアル)
②鉄緑会のカリキュラムに関する口コミ
・中3までに高校範囲が終わると聞いて、高1から入った僕は焦りましたが、高1の間は高校範囲をもう一度丁寧に復習してくださるので、しっかりとついていけました。また、高2の12月には高3のクラスを決める最も大事なテストがあったため、それに向けて多くの生徒は東京大学受験レベル、またはそれに近いレベルまでもっていくことができ、高3はさらなる応用力や、受験校それぞれに特化した対策に力を注ぐことができました。(引用:医学部予備校マニュアル)
・ついていけないとどんどん置いていかれるうえ、宿題も多く余程しっかりしていないと負のスパイラルに陥ります。(引用:塾ナビ)
③鉄緑会の講師に関する口コミ
・中学の時は学生の先生ばかりでした。特に教え方が上手いとか下手とかはなかったが、熱意をあまり感じず、とくにモチベーションが上がりませんでした。 高校になるとほとんど専任の先生になり、なかには有名な先生もいて、分かりやすく楽しく、モチベーションもあがりました。 (引用:医学部予備校マニュアル)
④その他に関する口コミ
・自習室が大きくないので、自習勉強のために通うという場所としては不向きでした。せっかく行ったのに場所がないということもあったようです。その時には教室を開放してくれていたようです。 (引用:塾ナビ)
最後に
鉄緑会は、東京大学合格に向けた英語、数学の先取り学習とハイレベルな学習環境が特徴です。
自発的な学習習慣があり、多量の宿題をこなせる生徒様には向いていると言えます。
一方、自分で勉強することが苦手だったり、勉強以外にも時間を取りたい生徒様には向いていないかもしれません。
向き、不向きがある塾ですので、ぜひこの記事を参考に検討してみてください。
▼当会では、鉄緑会生への指導に特化した家庭教師をご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。