1. 中学生の反抗期の特徴
2020年に福島県の中学生275名を対象として、現代の中学生における親との葛藤、親への反抗や親に対して抱く感情などを調べるための研究が行われました(注1)。
まずはその研究結果をもとに、中学生の反抗期の特徴について紹介していきます。
①親のことが嫌いなわけではない
中学生全体の結果では、
・その人(親)は私の気持ちをよく分かってくれる ・その人(親)とたくさんしゃべりたいと思う ・その人(親)と一緒にいたいと思う
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といった項目の得点が高い傾向にありました。
このことから、中学生になり反抗期を迎え、親を否定するような言動や反抗的な態度をとっていたとしても、
内心では親に感謝しており、親とのかかわりを多く持ちたいと考えている中学生が多いということがわかります。
反抗期の中学生の言動に対して大人が過剰に反応してしまうと、お互いに引くことができず、関係性の悪化につながってしまいます。
生意気なことを言われ、イライラしてしまう気持ちもわかりますが、
・心の底から憎まれているわけではないんだな ・思ってもない言葉が突発的に出てきてしまうんだな
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ぐらいに考え、対応してください。
②中学生の心理的変化の過程
各学年について親に対して抱く感情や親にとる行動・態度を比較したところ、
・中学1年生:「その人(親)のようになりたい」という気持ちが中学2年生、3年生より強く表れている
・中学2年生:他の学年よりも「その人(親)に腹が立つことが多い」という気持ちが高く、「その人(親)のようになりたい」という思いが低くなる
・中学3年生:「その人(親)を尊敬している」「その人(親)のようになりたいと 思う」項目の得点が低くなり、反対に「その人(親)の考えに納得している」項目の得点が高くなる
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ことがわかりました。以上のことから、
・中学1年生:親を身近な大人のモデルとして捉え、「親のような大人になりたい」と思うようになる
・中学2年生:親に反抗するようになり、1年生の時のように親のようになりたいとは思わず、親からの分化と親からの自立が進む
・中学3年生:親と自分が別個の人間であると捉えられる ようになり、親との考えの違いに対する理解が高まっていく。親と自分の考えは違って当然などといった認識をもつようになり、親との考えの違いに気を留めることが少なくなっていく
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ということがわかります。
2. 反抗期の中学生には、どのように接するべき?
次に反抗期の中学生に接する際にどのような点に気を付けるべきかについて紹介していきます。
①1人の大人として尊重する
中学生は「大人でもあり子どもでもある」という微妙な時期です。
小学生の頃の感覚で「○○しなさい」「××やっちゃいなさい」と声をかけてしまうと「いつまでも子ども扱いするな!」と反発されてしまいます。
そのため、ある程度のことは本人に任せるようにしましょう。親が口出しをしないでうまくいくならいいことです。
仮に失敗してしまったとしても責めず、
・そこから何を学べたのか ・次はどうすればいいのか
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について建設的に話し合うことで次に生かすことができるようになります。
中学生となった時点で自己責任について学んでもらうと同時に、親側も「子ども扱いしない対応」を心がけていきましょう。
②手本となる振る舞いを心がける
反抗期の子どもに対して言葉だけで言うことを聞かせようとしても上手くいきません。
中学生ともなればある程度知識や経験もあるため、上手く言い訳をされたり、逆に痛いところを突かれ言い負かされてしまうこともあるでしょう。
なかには「この大人の言うことは聞かない」と決め込んでしまっている子どももいます。
そのため、反抗期の子どもには、言葉ではなく行動で示していく必要があります。
・子どもに勉強を促す前に親も仕事や趣味を深めるために勉強する。 ・部屋の片づけをさせたいならまずは親が率先して片づける姿を見せる。
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そうすることで、親の言葉に説得力が生まれるだけなく、親の背中を見せることで「無言の促し」を行うことができるのです。
③まずは肯定から話を進める
子どもとの会話の中で「違う」「そうじゃない」という言葉を多用していませんか。
子どものやり方は時に非効率的で、経験豊富な大人からするとどうしても口をはさみたくなってしまいますよね。
ですが、開口一番に否定してくる人の言うことは聞きたくないですよね。自分でも間違っていることがわかっていたり、機嫌が悪かったりしていたらなおさらですね。
でもそれは子どもも同じなんです。だから、
・子どもの話を否定したくなった時は、まずは飲み込む ・子どもの話の中で共感できること、わかり合えることを伝え、子どもを認める ・その後で改善策を提案し、「何があなたにとって一番いい方法なのか」を一緒に考えていく
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ことが大切です。
3. 反抗期の中学生に勉強を促すにはどうしたらいい?
小学校では問題なく勉強できていても、中学生になり勉強の量と質に対応できなくなり、どんどんついていけなくなる子は珍しくありません。
反抗期でまともにコミュニケーションがとれないと親からの働きかけは難しくなってしまいます。
最後に反抗期の中学生に勉強を促す際に行ってほしいことを3つ紹介しますので、是非参考にしてください。
①勉強する意味について一緒に考える
受験勉強はよくマラソンに例えられます。
サボっていてはいつまでもゴールできません。逆に毎日寝る間を惜しんでまで勉強していては受験日まで体力も精神力ももちません。毎日コツコツ積み上げていく必要があります。
長期間勉強を行っていくためには目標が必要不可欠です。しかし中学生の想像力はまだまだ未熟で、漠然とした目標しか持っていない場合が多いです。
「この仕事がしたい」「あの高校に行きたい」もちろんこれらも立派な目標ですが、大人の目線で
・どうしてこの仕事がしたいのか ・その高校でしかできないことなのか
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を突き詰め、想像力を掻き立てていくことでより目標が明確になり、モチベーションも上がってきます。
②「10分だけ」勉強する
「勉強」と聞くと何時間も行わなければならない気がして、机に向かうまでのハードルが高くなってしまいますよね。
そこで試していただきたいのが、「10分だけ」勉強してもらうというやり方です。
「10分だけ」と聞くとハードルが下がり、「それならやってみようかな」という気分になりますよね。
もちろん10分だけの勉強では大したことはできません。しかし勉強を始めさせることが重要なのです。
心理学には「作業興奮」と呼ばれる現象があります。
【作業興奮】 一度勉強や仕事などの動作を行い始めると続きが気になり、動作を続けてしまおうとする心理状態
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そして作業を行うにつれてやる気が出てきて、積極的に作業を行うようになるのです。
この心理を利用することで、子どもに勉強を強要することなく、自発的に勉強してもらうきっかけを作ることができます。
③勉強方法を教える
そして一番効果的なのは「勉強方法を教える」ことです。
いくら勉強のモチベーションを高めたり、勉強するハードルを低くしたりしても、正しい勉強方法を知らなくては成績アップには繋がりにくいです。
親が教えるというもの1つの方法ですが、反抗期の中学生相手だと難しい場合が多いです。
また親の勉強方法が必ずしも子どもに合っているとも限りません。その子の個性や性格、得意・不得意の科目によって最適な勉強方法は変わってきますので、親が教えることはオススメしません。
一番効果的かつ即効性がある方法は「塾や家庭教師の先生に教わる」ことです。特に年が近いお兄さん、お姉さんとして関係性を築くことができる大学生ならばすんなりと指示が入りやすいです。
さらに教えてくれる先生が有名大学に在籍、もしくは卒業しているのであれば、勉強のコツや受験のテクニックもあわせて教えてくれます。
さらに高校生活の実体験や楽しかった思い出について教えてもらうことで、子どものモチベーションも上がり、ますます勉強にやる気を出してくれます。
最後に
今回は中学生の反抗期についてまとめました。中学生は
・はじめに親を大人のモデルとして捉える
・成長するにつれて「親は自分とは違う」「親とは違う考えを持ちたい」という思いが強くなり、反発するようになる
・3年生頃を境に親は親、自分は自分と切り離して考えることができるようになり、次第に反抗期が落ち着いてくる
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流れがあります。
そのため、親は
・子どもが発達段階のどこにいるのかを考え、 ・小学生までのような接し方ではなく、対等な大人として接しながらも ・必要に応じてフォローしていく
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立場をとることで、適度な距離感を保つようにしましょう。
勉強の促し方についても、
・口頭で勉強するように指示するのではなく、親が大人としての姿勢を見せるように心がける ・勉強のハードルを下げる ・勉強方法を学びやすい環境を作るなど、間接的にアプローチする
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ことで、自然と机に向かうようになります。
中学生活は3年間しかなく、あっという間に終わってしまいます。
子どもへの対応で悩んでいるなら、早め早めに行動しなければ手遅れになってしまいます。そうなる前に、上記の内容を参考にしつつ、まずは行動に移してみるのはいかがでしょうか。
【脚注】
(注1)齋藤諒,青木真理(2021).思春期における第二反抗期に関する研究―第二反抗期のプロセスと親との葛藤に着目して―
【参考文献】
今福理博,斉藤汐奈(2020).思春期における第二反抗期経験と対人依存及び家族関係との関連の検討
臼井利明(1997).青年心理学の観点からかみ「第二反抗期」