1. 反抗期の女子の背景
娘のことを思って伝えたのに、逆に痛いところを突かれてしまったり、「うるさい」「関係ないでしょ」なんて言われてしまうとついムカッと来てしまいますよね。
ですが反抗期の子どもはただやみくもに大人に対して反抗しているわけではありません。
特に反抗期の女子は強いストレスや不安を多く感じながら生活を送っています。
反抗期の女子への対応を考える前に、大人側が反抗期の女子が直面している現状を正しく認識していく必要があります。
そこでまずは反抗期の女子の背景について解説していきますので、参考にしてください。
①グループへの依存
学校などで集団生活を送っていくなかで子どもはグループを形成していきます。そのなかの1つにチャム・グループというものがあります。
チャム・グループとは心理学用語の1つです。女子中学生によく見られる集団のことで、厚生労働省(注1)によると
「同じ興味、考え、活動、言葉が共有されるグループ」
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のことを指します。好きなアイドルやドラマの話で盛り上がるなど、いわゆる「仲良しグループ」と言われるものです。
しかし、チャム・グループは
凝集性が高いがゆえに同調圧力が生まれやすく、仲間はずれやいじめの対象になりやすい
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という特徴を持っています。
そうならないために思春期の女子は言動に気を使っており、ストレスの高い集団生活を送っているケースが多くあります。
また、SNSが発達した現代では、自宅でもメッセージを通してやり取りをしなければならない場合もあります。
勉強もせずずっとスマホをいじっている娘さんにはそのような事情があるのかもしれません。
②ホルモンバランスによる精神的不安定さ
思春期になるとほとんどの方が生理を迎えます。身体が大人に近づいている証拠とはいえ、戸惑う人も少なくありませんし、なかには「恥ずかしい」とすら感じる場合もあるでしょう。
生理には女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが関係しています。
個人差はありますが、18歳ごろまでは女性ホルモンが安定しないため、
・生理痛が重くなる ・太りやすくなる ・偏頭痛や疲労感、不安感が生じる
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といった場合があります。
それが毎月起こり、なおかつ同じ月の中でもホルモンバランスが変動するため、心理面が非常に不安定になりやすい時期ともいえます。
身体の成長に心がついていけないお子さんも多く、生理からくるイライラを周囲の大人にぶつけてしまうケースも存在します。
2. 反抗期の女子には、どのように接するべき?
ここまで反抗期の女子の背景について解説しました。
反抗期の女子はストレスの多い生活も相まって反抗的な態度をとってしまいます。ですが、彼女たちの言動を全て肯定していては彼女たちのためになりません。
そこで次に反抗期の女子への接し方として気を付けるべき点を3つ紹介していきます。
①自己選択・自己決定に重きを置く
反抗期全般にもいえることですが、反抗期の子どもは、これまで大人の言うことを素直に聞いてきたことに対して違和感を持ち始めると同時に、
・自分で決めたい ・自分の思うようにやってみたい
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という気持ちが大きくなるため、大人の言うことを聞かなかったり、無視するようになります。
特に年頃の女の子の場合は保護者様の心配する気持ちが大きくなるあまり、色々な制約や制限などのルールで子どもを縛ってしまいます。
しかしこれでは子どもの反抗心を掻き立てたうえにルールも守られず、意味のないものになってしまいます。
そこでまずは一定の範囲の中でルールを本人に決めさせ、それが守れるようならルールをその都度見直していきましょう。
あくまで大切なのは「自己選択・自己決定」ですので、本人が納得することが重要です。
しかし近年物騒な事件が起きていることは事実ですので、保護者様の心配する気持ちと万が一の場合の対処法は伝えておく必要があります。
②「縦の関係」ではなく「斜めの関係」
親としては子どもはいつまで経っても子どもかもしれませんが、いつまでもその感覚でいては子ども達の反抗心を煽ることになってしまいます。
そこで意識してもらいたいのが、「斜めの関係」です。
子ども達に対して「ちゃんとした大人になってほしい」「こんな風に育ってほしい」という思いから、まるで上司と部下の関係のように、上から物事を伝えてしまう親は大勢います。
これを「縦の関係」と言いますが、これでは反抗期の子どもの心は動かせません。
反対に、まるで友達のように接し、仲の良い関係を築いている親もいます。これを「横の関係」と言います。
関係性が出来ていることは良いことですが、危険なことをやめさせたり、注意することができないと躾が難しくなってしまいます。
「斜めの関係」はその中間で、
対等に近い立場で関係性を作り上げながらも、言うべきことはしっかりと伝えていける関係性
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です。この関係性は私が反抗期のお子さんにカウンセリングを行うときにも意識して作ろうとしています。
「斜めの関係」を作る際に重要なのが「自己開示」です。自己開示とは
自分の感じていることや思ったこと、これまでの経験などを相手に伝える
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ことを言います。
例えば反抗期の女子が登校拒否になったとしましょう。
その際には「学校に行きなさい」とも「行きたくなかったら行かなくてもいいよ」とも言わず、たわいもない話からの流れで、自分自身の「学校に行きたくなかった時の気持ち」を話して、「自己開示」をします。
そうするとぽつりぽつりと学校に行きたくない理由を話してくれるものです。
その話を聞いたうえで、学校に行く意義を説明し、解決策を一緒に探し、最終的に学校に行けるように促していきます。
保護者様をはじめとした周囲の大人との関係性によっては、斜めの関係を構築するのに時間がかかりすぎる場合がありますので、その際は年齢の近い、身近な方に頼っても良いでしょう。
③母子関係の近さ
2000年に行われた研究(注2)では母親は、息子よりも娘からのサポートを多く受けていることが明らかになっています。
また、将来に対する期待や娘の人生に介入していきたいという希望、娘に自分のことを理解してほしいという気持ちを強く持っていることもわかっています。
娘に対しての期待感や希望が強すぎると、娘と自分との境界線があいまいになり、結果として、娘の人生に対して支配的に関わろうとしてしまう可能性があります。
「娘の人生は私のためのもの」と考えている方は少ないと思います。
しかし無意識的にそのような言動をとってしまうことで、反抗期の女子に束縛感やプレッシャーを与えてしまい、さらなる反抗に繋がる危険性があるため、注意が必要です。
3. 反抗期の女子に、勉強を促すにはどうしたらいい?
反抗期の女子は多感かつ繊細です。また大人からの指示に敏感に反応するため、無理に勉強をさせようとすると反感を買ってしまうでしょう。
そこで勉強するための環境や反抗期の女子の気分を整えるなどのサポートを行うことで間接的に勉強を促すことができます。
ここでは2つの方法を紹介していきますね。
①自分のペースで勉強できる環境を整える
リビングで勉強していては保護者様の目線や雑音が気になって勉強に集中できませんし、かといって自室で勉強させても、保護者様が勉強の進捗状況を気にしてしまって、つい「ちゃんと勉強しているの?」「どこまで進んだ?」と口をはさみたくなりますよね。
そのため保護者様や学校の先生以外の大人に勉強のスケジュールを管理してもらうことが有効です。
そうすれば保護者様は勉強に対して安心して任せることができ、反抗期の女子としても親から勉強について干渉されないため、両者にメリットがあります。
塾は個別の対応を行ってくれますが、塾からの帰宅時間が遅くなってしまうというデメリットがあります。
また、反抗期の女子はホルモンバランスの影響から体調が良くない日もありますので、曜日固定の塾よりも、柔軟に対応できる家庭教師が理想的です。
②リフレッシュに協力する
冒頭でも触れた通り、反抗期の女子は様々なストレスにさらされています。
そんななかで家でも息が詰まる思いをさせていては、逃げ場が無くなり、反抗が悪化するだけでなく、家出や引きこもりなどの行動を起こしかねません。
そうならないためにも、できるだけプレッシャーをかけるような言動は避け、
・ショッピングや外食、レジャーなどに誘う ・好きなアイドルのライブやグッズの販売会などの送迎を引き受ける
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など、勉強以外の時間も大切にしてあげてください。
そうすることで、反抗期の女子との関係性が深まるだけでなく、勉強へのメリハリとなり、モチベーションが向上していくでしょう。
最後に
今回は反抗期の女子の背景と接し方、そして勉強の促し方について解説してきました。
反抗期の女子は高ストレスな日々を送っていると説明してきましたが、保護者様のなかには「こんなのみんな経験している」、「少し甘すぎるのでは?」と思われる方もいるかと思います。
しかし彼女たちはまだ子どもです。問題解決のための経験、知識、方法、全てが未熟です。
そのため大人が子ども達に手を差し伸べなければなりません。大人から行動を起こさなければ子ども達は変わっていきません。
今回の内容が、反抗期の女子とよりよい関係性作りと、勉強に前向きに取り組める環境作りの参考になりますと幸いです。
【脚注】
注1)厚生労働省 令和4年度子ども・子育て支援推進調査研究事業一時保護所職員に対して効果的な研修を行うための調査研究
注2)高木紀子,柏木恵子(2000).母親と娘の関係ー夫との関係を中心にー
【参考文献】
赤坂真二(2009).女の子グループにおけるピア・プレッシャー
石川満佐育(2013).女子学生における第二反抗期の経験と親子関係、アイデンティティの確立との関連の検討
今福理博,斉藤汐奈(2020).思春期における第二反抗期経験と対人依存及び家族関係との関連の検討
臼井利明(1997).青年心理学の観点からかみ「第二反抗期」
未盛慶(2007).思春期の子どもに対する親の療育行動に関する先行研究の概観―親の養育行動の次元構成および子どもに与える影響について―