1. 栄光学園中学校とは?
JR大船駅から徒歩15分という立地の神奈川男子御三家の1校でもある伝統校です。生徒の自主性を重んじた自由な校風であり、自ら学ぶ姿勢が6年間で身に付きます。先生が無理に引き上げなくても、生徒様自身が自分で課題発見と解決をしていきます。
そういった常に主体的な姿勢が身に付くところが栄光学園中学校の魅力です。東大合格者数は神奈川県にある学校としては第2位であり、東大をはじめとする難関校への合格実績が高い学校です。
2. 栄光学園中学校の入試傾向について
それでは栄光学園中学校の入試について、具体的にチェックしていきましょう。
各教科では特に2024年度入試でポイントになった問題を厳選して解説します。
①栄光学園中学校入試の特徴
栄光学園中学校の受験科目や入試結果は次のとおりです。
<受験科目>
・算数60分(70点)
・国語50分(70点)
・理科40分(50点)
・社会40分(50点)
※4教科240点満点
<2024年度入試結果>
・合格者最低点:149点(得点率:62.5%)
・合格者最高点:196点(得点率:81.6%)
・合格者平均点:161.6点(得点率:67.1%)
・受験者平均点:141.0点
合格最低ラインが62.5%、合格者平均が67.1%となっていますので、65%の得点率である240点中156点が受験生にとっては目標得点になるでしょう。また栄光学園中学校のホームページには各教科の合格者平均得点もわかります。これを見ると
<合格者平均得点率>
・算数69.0%
・国語61.8%
・理科72.6%
・社会67.6%
となっており、算数、理科といった教科が得意な生徒が多く合格している特徴があると言えます。
②算数
例年大問4題構成となっており様々な分野から出題されています。
出題傾向やパターンを予測して対応するのではなく、その都度問題を自ら考え解く「思考力重視」の問題が多く出題されるのが特徴です。稀に難問が出ますがしっかり考えれば解ける問題が大半のため、失点は最小限にする必要があります。
大問ごとの出題に規則性はありませんが、整数・図形に関する問題は毎年出題されています。まずは頻出分野の対策をしっかり進めましょう。整数、素数、約数、倍数に関する学習を、図形は面積、体積、角度といった図形の特徴に関する学習は高いレベルまで引き上げていきたいところです。
そして、思考力問題の準備に時間をかけましょう。設問の指示を正確に理解して、手順や操作を進めることがポイントなので十分に演習を進めておきたいところです。
<2024年の特徴的な問題>
大問4の立体図形の切断、求積問題。立方体の中に三角柱が入っていますが、2つの三角柱の共有部分について考える問題です。いわゆる断頭三角柱の問題でした。立体の切断は初めて取り組んでできる問題ではなく、点や辺、頂点の関係を正確に掴み切断することが必要です。立体の体積を求める問題は中学受験では定番ですが、そこに切断というワンクッションを入れたよく考えられた問題でした。
③国語
例年大問3問構成で、説明文、小説、漢字の書き取りが出題されます。文章量は大問2つ合わせて8,000字程度の文章となっており長めの文章を扱っています。大半が記述解答になっており選択型の問題が少ないことが特徴です。近年は長文化が進んでいましたが、2024年はすこし落ち着きました。
一部抜き出しの問題などもあり、近年出題される傾向になってきました。重要なのは記述対策です。解答を作るためのキーワードを見つけ、そこから題意に沿ってシンプルに解答を作れるようにしましょう。
<2024年の特徴的な問題>
2024年度特徴的だった問題は大問2の問4理由説明問題でした。
70字以内の指定語数の空所補充問題の形式で、まずは登場人物の行動の理由を見つけます。相手を誤解させてしまったことへのあせりによる行動を読み取り、条件に合うようにまとめる問題でした。
単純に行動、言動から読み取って解答するのではなく、登場人物2人のそれぞれの描写を読み取るところが大切な問題でした。時間制限の中で、ていねいな読み取りが必要です。
④理科
近年は大問1題で理科4分野の様々な内容について扱う問題が出題されています。理科の本質的な学習である、課題発見、考察、解答といった手順を追うものが多く、小学生らしいなぜ?どうして?という興味関心を持てているかどうかが問われています。
当然のように計算力や知識といったものは必要ですが、設問の内容をよく読み取った上で適切な言葉で説明をするという説明や記述をする習慣が必要です。
<2024年の特徴的な問題>
2024年度の問題では問9や問10のようにグラフを読み解いて考える問題が特徴的でした。資料やグラフを読み解いて考えるというのは大学入学共通テストにも通じる、読解力、思考力、判断力を問う問題でした。
また、テーマであったプラスチックの鉢と素焼きの鉢の違いについては、安価で便利なものと、一見重く不便に感じる昔ながらの鉢の違いについて、「子どもたちが考える機会を作る」よく考えられたものだと思います。
⑤社会
1つテーマに沿って歴史、地理、公民といった分野を横断しながら出題されるのが特徴です。近年では、貨幣について、牛乳、地図がテーマになって出題されています。歴史、地理、公民などどの分野を中心に学習をすればよいかの的が絞れない、非常に独自性の高い問題が特徴です。
基本的な社会の学習をした上で、何かのテーマについて掘り下げていくような「探求型」の学習経験があると栄光学園のような問題に対応しやすくなるように感じます。普段から資料の読み取りや資料集や参考書といったものに目を通して知識をふやしておくような学習が必要な内容になっています。
<2024年の特徴的な問題>
2024年度特徴的だった問題は大問6でした。この問題は問1〜5までの内容を踏まえ、100〜150字程度の記述解答をする考察型の問題でした。貨幣と時代背景といったものがどのように関係しているか、現在にどうつながるのかを考えさせるようになっており、解答としてまとめ上げるための理解が必要な問題でした。
⑥問題の形式等が似ている学校は?
対策にあたっては、同じ神奈川御三家の聖光学院中学校、浅野中学校などの問題を合わせた演習をしましょう。また、併願先としても多い麻布中学校は、校風や求める力という点でも共通する部分があり演習しておくのがおすすめです。
また、全体的に記述が中心の問題が多いので難関校の問題を中心に演習することで学習効果も高まります。
3. 栄光学園中学校を受験する際の併願パターンは?
受験校を決めるにあたっておすすめなのは「第一志望校の受験日までに合格」をしていることです。どの生徒様にとっても初めての受験。併願校で合格して本命に望めるかどうかは大きな安心材料になります。1月に受験する併願校から2月2日まで徐々にステップアップして受験をすることが個人的にはおすすめです。
①1月
栄東中学校・市川中学校・渋谷教育学園幕張中学校 |
1月は栄東中学校、市川中学校が挙げられます。
合格を確実にしておくことがこの時期の入試の目的です。成績に余裕があり、難易度高めの学校を受験しておきたいのであれば渋谷教育学園幕張中学校を受験しましょう。ただし、本番は2月。無理をしすぎる必要はありません。
②2月1日午前・午後
麻布中学校・逗子開成中学校・鎌倉学園中学校 |
腕試しなら麻布中学校を受験する生徒が多いです。校風も栄光学園に近く、入試の問題傾向も思考力に力を入れている点で似ています。偏差値が栄光学園に5ポイント以上ひらいているのであれば、逗子開成中学校を堅実に受験するのがよいでしょう。
③2月2日
栄光学園 |
栄光学園の受験本番です。今まで準備してきた力を全て出し切りましょう!
④2月3日
浅野中学校 |
栄光学園中学校志望者の多くの方が、浅野中学校を受験します。他には筑波大学附属駒場中学校、早稲田中学校、海城中学校などの受験が都内ではありますが、学校の立地や実際の通学を考えると浅野中一択になります。
⑤2月4日
聖光学院中学校② |
栄光学園は1回勝負ですが、聖光学院中学校は2回目の受験があります。難度は上がってしまいますが、併願先としては申し分ないため、ここでチャレンジする受験生も多くいます。
⑥2月5日
逗子開成中学校③・神奈川大学附属中学校(C日程) |
ここまでの受験結果を踏まえて出願することになる日です。
逗子開成中学校③もしくは神奈川大学附属中学校(C日程)のいずれかの受験になるかと思います。
4. 栄光学園中学校の受験対策方法
栄光学園の入試問題は思考力を問われる問題や記述の問題が中心で入念な準備が必要です。
一方で問題は全く歯が立たないという形式ではなく、どこかで見たことはあるがアプローチが新しいという、試験本番での考える力が問われる問題が多く出題されます。
標準、応用の問題演習をした上で、栄光学園中学校の過去問題をできる限り遡って学習するのがよいです。
①時期別・教科別対策内容
(1)小学4年生
受験勉強は小4から始めましょう。
算数 |
算数は数の性質を中心に、規則性や周期算、数列などの考え方や平面図形の理解を深めたいところです。特に栄光学園中学校は立体図形が出題される傾向にあるため、まずは平面図形を十分に理解しておきたいところです。 |
国語 |
国語は読書量を増やし、説明文読解に触れる機会を増やすことが大切です。早い段階から記述式の解答にも慣れておきましょう。 |
理科 |
理科は出題傾向を予測するのは難しく、どの分野から出題されてもよいように準備するため小4生の段階ではまず中学受験教材を使って学習をスタートし、理科は百科事典や図鑑を見て知識を広げておくようにしましょう。 |
社会 |
栄光学園中学校の社会はテーマによる出題のため地理は地図帳や資料を読み、歴史は歴史まんがなどを活用、公民は新聞やニュースを見たうえで、分野を横断するように興味を持って理解を深める必要があります。興味関心を日常的に広げるのが大切です。 |
(2)小学5年生
受験科目の学習スタートです。「算数国語は小5で一通りの学習を終え、理社は図表や地図など知識を深める」ようにしましょう。
算数 |
算数は小5までで単元ごとの学習を完了しておくのがよいです。栄光学園中学校でよく出題される数の性質に関する問題、立体図形の体積や切断などに対応できるように、小6生になる前に算数の分野別学習は終えておくことがポイントです。 |
国語 |
国語は記述問題と文法事項の確認を進めましょう。文法の学習が必要なのは問題に文法が出題されるからだけでなく、選択問題を論理的に考えて解くことと、記述問題を正確に書けるようにするため必要です。特に記述問題が中心となる栄光学園では、解答の係り受け(主語述語の関係)がしっかりと理解できていることが重要です。 |
理科 |
理科は計算が必要な問題、速さ、質量、体積の問題を十分演習しておきましょう。図表やグラフを読み取って計算する問題、資料から計算をする問題などに対応できるようにしておきましょう。 |
社会 |
社会は近現代の統計が揃っている時代の資料を使った問題を解いておき、教科書にも出てくる農産物の生産量、工業製品の出荷額など目を通してください。近年の社会の出題テーマを見ると、生活と密接な関係のあるものをテーマに扱っており、食品、生活必需品といったものに興味や関心を持っておくことが大切です。 |
(3)小学6年生(4月〜6月)
全領域を完成させて総合演習に入る時期です。この時期には入試問題を演習しましょう。自分で対策するというよりも、志望校対策をする中学受験塾に通って効率よく仕上げ学習をするのがよい時期です。
算数と国語は総合演習です。志望校以外の入試問題で構成された演習問題を解きながら実力養成をしましょう。志望校の入試問題は9月以降にとっておき、入試本番を想定した過去問演習で使うのがよいです。この時期は時間内に問題を解く、正確にミスなくできるようにする、そして得意分野を作っておく練習をする時期です。そして復習ノートを作って間違い直しをして、自分の弱点分野にあたる学習を復習しておきましょう。
理科社会も分野別の学習から分野を横断した入試問題形式の学習を進めましょう。この段階で知識不足がないように、小4、小5の学習を進めておきたいところです。
(4)小学6年生(7月〜9月)
まとめの時期です。基礎、標準レベルの問題で失点しないことが中学受験では重要なため、夏期講習などを通して徹底して基礎力を固めましょう。そして勝負を分けるのが難度の高い問題です。特に栄光学院中学校は算数の立体図形、数の性質、規則性といった問題、国語の読解記述についてはここで仕上げをしておきたいところです。
理社はここがまとまった弱点補強の機会です。分野別に復習をしていくこと、資料を読み解いて知識を深めることなどやりたいことはたくさんありますが、優先準備を決めて取り組みましょう。
塾では志望校別のテキストを使って対策をする時期です。この時期は成果重視で学習塾などの環境も上手く使うべきです。また、ともに同じ志望校を目指して学習する同級生がどの程度のレベル、到達度なのかを比べ合うことも重要な経験です。
(5)小学6年生(9月~11月)
志望校の過去問題の演習時期です。第一志望校と併願校の過去問題を演習し本番力をつけます。試験なれをして、最後まで集中しきって解答できるように、この時期にリズムをとって進めていきます。最低でも過去問題は10年分。1度ではなく2度3度と解きなおしをしましょう。
この時期の学習のポイントは「本番力の養成」です。入試本番の試験時間、試験問題を意識した学習を進めて本番で得点できる力をつけます。
詳しくは「過去問題対策方法」に記載していますのでそちらもご覧ください。
(6)小学6年生(12月~1月)
入試本番へ向けての最終調整の時期です。この時期には志望校、併願校、入試スケジュールなどはほぼ決まっていますので、試験日から逆算して過去問題の演習と弱点補強、日々のルーティンとしての問題演習などを進め、万全の状態で本番を迎える準備をする時期です。
規則正しい生活リズムを意識して、健康的な生活を意識しましょう。受験のことを考えると集中力のピークを午前中に持っていけるようにしましょう。
②栄光学園中学校の過去問対策方法
(1)過去問の効果的な使い方
栄光学園中学校のような独自性が強く、難度の高い入試問題は次のように進めるのがおすすめです。
- 入試本番と同じ時間、時間割で問題を4教科解く
- 自己採点をして解説をよく読む
- 該当分野の問題演習を進める
- 間違えた問題は再度チャレンジする
この4つです。
(2)いつから解き始めればよいか
標準的な開始時期は小6の9月です。過去問題の対策は、4教科の学習と演習が終了した後に実施しましょう。受験勉強のなかで、過去問題を使った学習は本番の次に重要と言ってもいいくらいの大切な学習です。雰囲気を味わいたいので、「大問1つだけ昨年度の問題をやってみる」といったことは避けて丸々1年分解くことがおすすめです。
(3)何年分を何周解けばよいか
4教科で10年分は解いておきましょう。時間に余裕があれば15年分解いても良いと思います。
ただし、1度解いて終わりではなく、解き直しと再チャレンジを含めても同じ年度を最低3周は解いておきたいところです。入試の過去問題はどの問題が出題されても、バッチリできるようにしておくのがベストです。
算数 |
算数は栄光学園中学校の勝負を分ける科目です。最低15年分を3周は必ず、問題の独自性を考えるとさらに追加して、過去問題の演習はしておきたいところです。時間配分や問題の解き慣れにもなるように、たっぷり時間をかけて準備を進めてください。 |
国語 |
国語は10年分を3周必ずしておきましょう。そして記述問題の根拠を時間内に見つけ、文構造を組み立てて解答する練習をしっかりしておきましょう。 |
理科 |
理社についてはまずは10年分。復習は2周分でも足りるかもしれませんが、分野ごとの演習をさかのぼって問題を解いておくのはありです。ただ、問題を解く前に単元別の復習をよくしておくべきなので、得点と時間をよく考え、相談しながら決めましょう。 |
③保護者様にできるサポート内容
(1)生徒様のモチベーションを高める
受験へ向けて最も成績を左右するのは生徒様のモチベーションです。高いモチベーションを維持するには身近にいる保護者様がよいパートナーになっていることが望ましいです。生徒様は怒ったり、叱られるということよりも「信頼され期待される」ことのほうを望んでいます。
特に学習ではテストの点数などで落ち込んだり、フラストレーションがたまることがあります。その時によく話を聞いて、優しいアドバイスや前向きな言葉がけをしていただくだけで生徒様はまた頑張ろうと思って行動に移せます。特に親子の関係では、「生徒様の意見をよく聴く」ことを意識してください。
(2)スケジュールの管理、ペース配分などのサポート
小学生が苦手なところとしてどの生徒様もあるのがスケジュール管理です。中学受験をする小学生はある意味アスリートと同じような状態にありますので、マネジメントを保護者様がすると学習に集中できるようになります。
いつまでに何を終わらせるか?といったことも生徒様だけに任せてパンクしてしまうよりも、ご家庭でオープンにして「いつまでに何をやる」という目標を立てたり、「うまくいかなかった場合にどうリカバリーするか」などを管理していただけると生徒様も安心して学習に集中できるようになります。
(3)学習環境の構築
学習環境は中学受験ではとても重要なポイントです。ここでの学習環境は勉強部屋のような施設・設備だけではなく、使う教材や通う塾のことも示しています。
多くの方は中学受験塾に通塾されながら準備をすると思いますが、教材や塾選びも大切です。どのくらい生徒様の面倒をみてくれるか、相性はどうか?といったところまで生徒様にすべて考えさせることは難しいですから、保護者様が万全の状態で受験の準備ができるように、整えていくことが大切です。
まとめ
栄光学園中学校の入試問題は、自ら考え解答に辿り着くための思考力、そしてそれを表現する記述力が必要な問題です。典型的な問題でどこから見たことがあるような問題から一歩先まで進んで考えさせるように構成されており、興味関心や課題解決力が重視されています。
独自性が強いこともあり過去問題での練習が重要です。ぜひ時間を上手に使って多くの過去問題に取り組んでください。小学校高学年だけでなく、低学年や入学前からどうしてそうなっているかというものごとを探求していく姿勢を育みましょう。
基礎がしっかりできていれば、入試にチャレンジできる問題ですから楽しみながら受験へ向かえるように準備を進めてください。
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