1. 洗足学園中学校とは?
川崎市溝口にある女子の中高一貫校です。神奈川の女子校といえば、神奈川女子御三家と言われたフェリス、横浜雙葉、横浜共立が人気でしたが今や洗足学園が女子校の中ではトップ校となり、年々人気が過熱しています。
東大合格実績が2020年代に入り上昇し続け、2022年には20名に到達しました。試験3回と帰国生入試実施の受験しやすさや、また立地の良さなどもあって受験倍率も軒並み3倍台です。
高校募集と音楽科の募集停止、高3までの数学必修化などもあり進学実績が伸びてきたことが大きく影響しています。ますます人気は高まっていくことでしょう。
2. 洗足学園中学校の入試傾向について
それでは洗足学園中学校の入試について、具体的にチェックしましょう。
各教科ではとくに2024年度入試でポイントになった問題を厳選して解説します。
①洗足学園中学校入試の特徴
洗足学園中学校の受験科目や入試結果は次のとおりです。
※帰国生入試については学校ホームページをご確認ください。
<受験科目第1〜3回共通>
・算数50分(100点)
・国語50分(100点)
・理科社会60分(75点)
※4教科点350満点
<2024年度第1回入試結果>
・合格者最低点:194点(55.4%)
・合格者最高点:256点(73.1%)
・合格者平均点:非公開
・受験者平均点:180.8点(51.6%)
・【算数】合格者最高点:69点、合格最低点:24点
・【国語】合格者最高点:87点、合格最低点:47点
・【理科】合格者最高点:66点、合格最低点:32点
・【社会】合格者最高点:63点、合格最低点:35点
<2024年度第2回入試結果>
・合格者最低点:201点(57.4%)
・合格者最高点:264点(75.4%)
・合格者平均点:非公開
・受験者平均点:188.3点(53.8%)
・【算数】合格者最高点:85点、合格最低点:29点
・【国語】合格者最高点:81点、合格最低点:35点
・【理科】合格者最高点:66点、合格最低点:34点
・【社会】合格者最高点:72点、合格最低点:38点
<2024年度第3回入試結果>
・合格者最低点:212点(60.5%)
・合格者最高点:257点(73.4%)
・合格者平均点:非公開
・受験者平均点:186.8点(53.3%)
・【算数】合格者最高点:83点、合格最低点:40点
・【国語】合格者最高点:78点、合格最低点:47点
・【理科】合格者最高点:60点、合格最低点:28点
・【社会】合格者最高点:70点、合格最低点:38点
洗足学園は合格者合計の平均点、教科平均点が非公開のためわかりません。公表されている合格者最低点から分析していくと、試験回数による差はあるものの、得点率66〜70%が目標ラインになります。
算数よりも国語の得点率が高いので、どちらもバランスよく学習していくことが重要です。
②算数
例年大問1が計算問題、大問2と3が小問集合、そして大問4、5が特殊算、図形といった傾向になっています。
大問1は計算問題です。ここでミスなく得点できることが重要です。
大問2は速さ、割合、場合の数といった標準的な問題が出題されています。この大問1、2は合格のために完答しておきたいところです。
大問3はすこしステップアップした小問集合です。引き続き数の性質、速さ、割合、面積など問題が出題されています。とくに式にして整理する、線分図で考えるといった中学受験では基本的なことを身につけられているかで得点率が変わります。女子校は算数を得意にしておけるかどうかが合否にも影響します。
大問4、大問5ですが仕事算、流水算、立体図形などが出題されていますでした。立体図形は2年連続しました年もありますが、年によって出題は変わり、整数、速さ、分数などの問題も出題されています。
2024年度特徴的だった問題は大問4の仕事算の問題でした。文化祭での作業を通して一部記述説明が必要になる問題でもあり、受験生ととしては取り組みにくかった部分もあるかもしれません。
状況を整理して1つずつ進めることができれば決して解けない問題ではないので、よく復習しておきたい問題でした。
③国語
例年大問2題の問題構成で、論説文、小説文が基本になっています。特徴としては記述問題が多い点が挙げられます。50〜80字程度の記述は毎年出題され、説明記述、理由記述が大問1つにつき3〜4題は出題されます。
漢字や知識といった問題は大問の中に小問として扱われますが標準的で外せない問題です。とくに女子校は文章読解から深い考察、思考を要求してくる問題もあるため、知識面は読書や語彙力を伸ばす学習を通して力をつけていきたいところです。
2024年特長的だった問題は大問1の問5でした。「別の次元を構成しているもの」とは何かという抽象的な問いに対して、本文中のキーワードを見つけ解答を構築して答える小学6年生には難しく感じる問題だったと思います。
繰り返しになりますが記述対策は十分に進めましょう。
④理科
例年大問4題構成で理科4分野すべてが出題されます。
物理分野は力学、電流や光といった問題、化学は質量や体積といった計算に関する問題、生物は幅広く出題傾向にあり、地学については天体が出題されやすい傾向にあります。平均得点から見てわかるように、受験生はなかなか苦戦する問題が多く、得点できる問題を正確に得点しきることが大切です。
2024年特長的だった問題は大問1の力学、おもりの釣り合いの問題でした。理科が苦手な生徒様にはこの釣り合いが嫌いという方も多く、とくに女子はその傾向があります。
その弱いところをスパッと一刀両断するようにこの問題は出題されており、釣り合いと重さ、角度についてよく考えなければいけない問題でした。分野別に入試に向けては対策をしっかりとしておきたいところです。
⑤社会
例年3題構成になっており、分野別に出題がされています。
比較的設問の導入文が長い場合があるので時間に注意が必要です。とくに洗足学園中学校は理科社会が同試験時間内に2科目実施となっているので、できる問題をテキパキと解凍していくことが要求されています。
図表、統計資料等が必ず入ってくるのでその読み取りは普段から練習しておくことをおすすめします。一部資料の読み取りには難しい問題も入ってくる場合があるのでその点は注意が必要です。まずは満遍なく社会全範囲を学習することから始めてください。
2024年特長的だった問題は大問3の問11、インターネットの危険性に関する問題でした。社会の問題ですが、解答するにあたっては国語的に考えるのがベストです。
というのも、文章からは前述の箇所の対比構造になっていることが明らかで、一見好きなように書くことができそうですが書くべきことは決まっているという問題でした。
⑥問題の形式等が似ている学校は?
併願先にもなってくる、田園調布学園中学校、鷗友学園中学校、少し難度を上げて豊島岡女子中学校などの問題を対策していくと効率よく学習ができます。
神奈川トップレベルの戦いを制するには、都内の女子御三家の問題などにも余裕を持ってチャレンジしておくことも良い準備になります。
3. 洗足学園中学校を受験する際の併願パターンは?
受験校を決めるにあたっておすすめなのは「第一志望校の受験日までに合格」をしていることです。どの生徒様にとっても初めての受験。併願校で合格して本命に望むことができるかどうかは大きな安心材料になります。
1月に受験する併願校から2月2日まで徐々にステップアップして受験をすることが個人的にはおすすめです。
①1月
浦和明の星女子中学校 |
1月受験は基本的に練習という位置付けになります。受験する必要があるかどうかをよく吟味して、出願する場合は準備を、そうでない場合は2月1日の本命へ向けての準備を進めましょう。
②2月1日
午前:洗足学園中学校(第1回) |
第一志望校の洗足学園中学校の受験日です。他にも受験日がありますが、まずは早い段階で志望校との距離感を測ることのできる1回目の入試にチャレンジすることをおすすめします。
午後の田園調布学園中学校・品川女学院中学校は、いずれも算数のみ受験ができる学校です。算数にアドバンテージがあるのであれば、ここで合格をしておけると今後の出願にも余裕を持てます。
③2月2日
洗足学園中学校(第2回) |
第一志望の2回目の受験日です。連日になりますがこの2日間で定員のほとんどが決まるため、ここで力をすべて発揮しておきたいところです。
④2月3日
鷗友学園中学校・豊島岡女子中学校・横浜共立学園中学校 |
複数の受験校が選択できますが、通学を考えて選択することになるでしょう。ここは豊島岡女子中学校のチャレンジも選択肢ではありますが、堅実にいくなら鷗友学園中学校、横浜共立学園中学校の受験になると思います。
⑤2月4日
豊島岡女子中学校・田園調布学園中学校 |
この日の候補としては豊島岡女子中学校や田園調布学園中学校です。合格がほしいのであれば田園調布学園といったところになると思います。
⑥2月5日
洗足学園中学校(第3回) |
第一志望校にチャレンジをしたい状況であれば第3回入試に臨みましょう。合格を確保できていない状況になってしまったのであれば、田園調布学園中学校や品川女子中学校が候補として上がってくると思います。
4. 洗足学園中学校の受験対策方法
洗足学園の入試問題は最難関にふさわしく全科目、全分野の準備をしておく必要があります。まずは基礎の学習を徹底しましょう。
基本の土台があって初めて力が生きてくる問題も多いですから、早めの準備とたっぷりと余裕を持った学習、そして勉強だけでなくさまざまな自然、社会といったものに興味関心を持つことも大切です。それでは具体的に解説します。
①時期別・教科別対策内容
(1)小学4年生
受験勉強は小4から始めましょう。
算数 | 特殊算(周期算・植木算・つるかめ算など)の考え方や図形の理解を深めたいところです。 |
国語 | 読書量を増やし、説明文読解に触れる機会を増やすことが大切です。 |
理科 | 4分野が満遍なく出題されるため小4生の段階ではまず中学受験教材を使って学習をスタートし、理科は百科事典や図鑑を見て知識を広げておくことをしましょう。 |
社会 | 地理、歴史、公民といった分野の出題があるため地理は地図帳や資料を読み、歴史は歴史まんがなどを活用、公民は新聞やニュースを見るようにしましょう。興味関心を日常的に広げるのが大切です。 |
(2)小学5年生
受験科目の学習スタートです。「算数国語は小5で一通りの学習を終え、理社は図表や地図など知識を深める」ようにしましょう。
算数 | 小5までで単元ごとの学習を完了しましょう。洗足学園のような難関校では特定の分野に強い弱いといったリスクは避け、バランス良くできるようにしてください。 |
国語 | 記述問題と文法事項の確認を進めましょう。とくに洗足学園は記述の対策がポイントになってきます。文法の学習が必要なのは問題に文法が出題されるからだけでなく、選択問題を論理的に考えて解くことと、記述問題を正確に書けるようにするため必要です。 |
理科 | 計算が必要な問題、速さ、質量、体積の問題を十分演習しましょう。とくに化学や物理の計算問題については出題されやすい傾向にあるためしっかり練習しましょう。 |
社会 | 近現代の統計が揃っている時代の資料を使った問題を解いておき、教科書にも出てくる農産物の生産量、工業製品の出荷額など目を通してください。社会の教科書のグラフ、資料の読み取りの時間を作りましょう。 |
(3)小学6年生(4月〜6月)
全領域を完成させて総合演習に入る時期です。この時期には入試問題を演習しましょう。自分で対策をするというよりも、志望校対策をする中学受験塾に通って効率よく仕上げ学習をするのがよい時期です。
算数と国語は総合演習です。志望校以外の入試問題で構成された演習問題を解きながら実力養成をしましょう。志望校の入試問題は9月以降にとっておき、入試本番を想定した過去問演習で使うのがよいです。
この時期は時間内に問題を解く、正確にミスなくできるようにする、そして得意分野を作っておく練習をする時期です。そして復習ノートを作って間違い直しをして、自分の弱点分野にあたる学習を復習しましょう。
理科社会も分野別の学習から分野を横断した入試問題形式の学習を進めましょう。この段階で知識不足がないように、小4、小5の学習を進めておきたいところです。
(4)小学6年生(7月〜8月)
まとめの時期です。基礎、標準レベルの問題で失点しないことが中学受験では重要なため、夏期講習などを通して徹底して基礎力を固めましょう。そして勝負を分けるのが難度の高い問題です。
洗足学園の対策としては算数、国語はこの夏で仕上げましょう。算数であれば数の性質、立体図形、国語は説明記述や理由記述を仕上げておきたいところです。理社はここがまとまった弱点補強の機会です。
分野別に復習をしていくこと、資料を読み解いて知識を深めることなどやりたいことはたくさんありますが、優先準備を決めて取り組みましょう。
塾では志望校別のテキストを使って対策をする時期です。この時期は成果重視で学習塾などの環境も上手く使うべきです。また、ともに同じ志望校を目指して学習する同級生がどの程度のレベル、到達度なのかを比べ合うことも重要な経験です。
(5)小学6年生(9月~11月)
志望校の過去問題の演習時期です。第一志望校と併願校の過去問題を演習し本番力をつけます。試験なれをして、最後まで集中しきって解答できるように、この時期にリズムをとって進めます。最低でも過去問題は10年分。一度ではなく二度三度と解きなおしをします。
この時期の学習のポイントは「本番力の養成」です。入試本番の試験時間、試験問題を意識した学習を進めて本番で得点できる力をつけます。詳しくは「過去問題対策方法」に記載していますのでそちらもご覧ください。
(6)小学6年生(12月~1月)
入試本番へ向けての最終調整の時期です。この時期には志望校、併願校、入試スケジュールなどはほぼ決まっていますので、試験日から逆算して過去問題の演習と弱点補強、日々のルーティンとしての問題演習などを進め、万全の状態で本番を迎える準備をする時期です。
規則正しい生活リズムを意識して、健康的な生活を意識しましょう。受験のことを考えると集中力のピークを午前中に持っていけるようにしましょう。
②洗足学園中学校の過去問対策方法
(1)過去問の効果的な使い方
洗足学園中学校のようにトップレベルの難度の高い入試問題は次のように進めるのがおすすめです。
- 入試本番と同じ時間、時間割で問題を4教科解く
- 自己採点をして解説をよく読む
- 該当分野の問題演習を進める
- 間違えた問題は再度チャレンジする
この4つです。
(2)いつから解き始めればよいか
標準的な開始時期は小6の9月です。過去問題の対策は、4教科の学習と演習が終了した後に実施しましょう。受験勉強のなかで、過去問題を使った学習は本番の次に重要と言ってもいいくらいの大切な学習です。
ですから雰囲気を味わいたいので大問1つだけ昨年度の問題をやってみるといったことは避けて丸々1年分解くことがおすすめです。
(3)何年分を何周解けばよいか
4教科で10年分は解きましょう。時間に余裕があるのであれば15年分解いても良いと思います。ただし、1度解いて終わりではなく、解き直しと再チャレンジを含めても同じ年度を最低3周は解いておきたいところです。
入試の過去問題はどの問題が出題されても、バッチリできるようにしておくのがベストです。
算数 |
算数はミスなく得点し、国語のできで合否が分かれます。最低10年分を3周は必ず、問題の独自性を考えるとさらに追加して過去問題の演習はしておきたいところです。 時間配分や問題の解きなれにもなるように、たっぷり時間をかけて準備を進めてください。 |
国語 | 10年分を3周必ずしましょう。そして記述問題の根拠を時間内に見つけ、文構造を組み立てて解答する練習をしっかりしましょう。 |
理科 | 理社は10年分。復習は2周分でも足りるかもしれませんが、分野ごとの演習としてさかのぼって問題を解いておくのはありです。ただ、問題を解く前に単元別の復習をよくしておくべきなので、得点と時間をよく考え、相談しながら決めましょう。 |
③保護者様にできるサポート内容
(1)生徒様のモチベーションを高める
受験へ向けて最も成績を左右するのは生徒様のモチベーションです。高いモチベーションを維持するには身近にいる保護者様がよいパートナーになっていることが望ましいです。生徒様は怒ったり、叱られるということよりも「信頼され期待される」ことのほうを望んでいます。
とくに学習ではテストの点数などで落ち込んだり、フラストレーションがたまることがあります。その時によく話を聞いて、優しいアドバイスや前向きな言葉がけをしていただくだけで生徒様はまた頑張ろうと思って行動に移すことができます。
とくに親子の関係では、「生徒様の意見をよく聴く」ことを意識してください。
(2)スケジュールの管理、ペース配分などのサポート
小学生が苦手なところとしてどの生徒様もあるのがスケジュール管理です。中学受験をする小学生はある意味アスリートと同じような状態にありますので、マネジメントを保護者様がすることでプレーである学習に集中できるようになります。
いつまでに何を終わらせるか?といったことも生徒様だけに任せてパンクしてしまうよりも、ご家庭でオープンにして「いつまでに何をやる」という目標を立てたり、「うまくいかなかった場合にどうリカバリーするか」などを管理していただけると生徒様も安心して学習に集中できるようになります。
(3)学習環境の構築
学習環境は中学受験ではとても重要なポイントです。ここでの学習環境は勉強部屋のような施設・設備だけではなく、使う教材や通う塾のことも示しています。多くの方は中学受験塾にご通塾され準備をすることになると思いますが、教材や塾選びも大切です。
どのくらい生徒様の面倒をみてくれるか、相性はどうか?といったところまで生徒様にすべて考えさせることは難しいですから、保護者様が万全の状態で受験の準備ができるように、整えていくことが大切です。
まとめ
神奈川女子校最難関であり、今や全国的にも注目を集める存在となった洗足学園中学校。合格のためには十分な準備が必要です。入試問題は記述もあり難しいものもありますが、基礎を大切に自ら積極的に考える思考と姿勢で学習を進めていくことが大切です。
生徒様の主体性を大切にしながら、多くの学習機会を作ってぜひ学ぶ楽しさを感じで学習を進めてみていただければと思っております。
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