1. 中学生にも留年はあるのか
基本的に中学生が留年することはありません。
正確には「制度としては存在するものの適用されるケースはきわめて少ない」というのが現状です。
これは、義務教育の目的が教科学習だけではないことと強く関連します。
文部科学省では、義務教育の目的を「『人間力』を備えた市民となる基礎を提供すること。
つまり,社会に生きる市民として,職業生活,市民生活,文化生活などを充実して過ごせるような力を育むこと」と定めています。(※1)
義務教育は社会性を育むために存在するものであり、大切なのは他の人たちとコミュニケーションをとる能力や、生きるために必要な勉強のしかたを学ぶことであるということです。
そのため、特定教科の理解度が低いからといって進級をさせないというシステムにはなっていません。
ただし、私立中学校においてはこの限りではなく、実際に留年するケースもあります。 詳しくは後ほど解説します。
①中学生の原級留置(留年)に関する法律上のきまり
小中学校の運営に関する具体的な規則は「学校教育法」によって定められています。
学校教育法施行規則第57条に「各学年の課程の修了又は卒業を認めるに当たっては、児童の平素の成績を評価して、これを定めなければならない。」とあります。(※2)
つまりシステム上は義務教育であっても留年は可能だということです。
具体的な運用については各自治体の「小・中学校管理規則」により規定されますが、どの自治体でも学校教育法と同じような内容が記載されています。
②実際に中学生が留年するケース
中学生が留年するシステム自体はありますが、実際に留年になる場合は非常に稀です。
特に、保護者様が心配するような「学業成績に問題があるため留年」というケースはほぼありません。
しかし、実際に留年になる中学生もいます。
・不登校や病気療養のため長期間欠席した生徒に対して「留年しますか」と打診が来る
・私立中学校の場合は成績や出席日数が原因で留年になるケースがある
このような場合、同じ学年に再度在籍する事例自体はときどき見られます。
2. 公立中学校に留年はあるのか
公立中学校の場合、学校が生徒を無理やり留年にするということはありません。
ただし、なんらかの事情で長期間欠席した生徒に「留年しますか、進級しますか」と意向を尋ね、結果として留年という措置をとる例は見られます。
ここからは、公立中学校に基本的に留年がない背景と、「こういう場合はむしろ留年しなくてもいいの?」というケースについて解説します。
①日本の義務教育は「年齢主義」
日本の義務教育では「年齢主義」という仕組みが採用されています。
これは、文部科学省によると「義務教育制度における『義務』の完了を認定するに当たり,年齢に達したならば自動的に義務教育は終了したと認めるものである」という制度です。(※3)
反対の考え方として「修得主義」があり、これは高校のように各科目に関する一定の成果を上げ、単位を取得することで進級・卒業するというシステムを指します。
小中学校にも修得主義を取り入れるべきだという議論は何度となく起こっていますが、今のところ採用された例はありません。
この「年齢主義」の考え方に基づき、公立中学校では原則生徒に留年をさせず、原則すべての生徒に進級や卒業をさせるのが現行のシステムなのです。
②不登校でも留年はしないのか
不登校の中学生は年々増加しています。
文部科学省は、2022年度に小中学生の不登校児童生徒数が過去最大の約30万人にのぼったと発表しています。(※4)
学校に通えていなくても、現在のシステムではほとんどの生徒がそのまま進級・卒業します。
これは前述の「年齢主義」の考えに基づく仕組みだと考えられます。
その一方で、学校側から「もう一度同じ学年で通ってみますか」と提案されるケースも、ごく稀に存在するようです。
「留年させられる」ことはありませんが「留年を勧められる」場合はあると言えるでしょう。
③勉強でついていけない子はどうなるのか
公立中に通う生徒様が、学校の勉強についていけないという理由で留年することはありません。
「留年してやり直してもらった方がいいのでは」と考える保護者様もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながらそのような仕組みはないのです。
そのため、生徒様が当該学年の学習内容を理解できていないとしても、自分自身で勉強し、解決するしかありません。
家庭内で解決できれば問題はありませんが、難しい場合には塾や家庭教師の利用も検討してみましょう。
3. 私立中学校に留年はあるのか
私立中学校の場合は、留年するケースがあります。
私立の学校は営利団体である学校法人が建学の精神に基づいて運営しているため、ある程度独自のルールを定めることが可能です。
よって、留年や卒業に関する仕組みも学校ごとに定めることができるのです。
ここからは、私立中学校で留年してしまうケースについて紹介します。
どのようなとき留年になってしまうのか
私立中学校で留年になるパターンは、高校の場合と似ています。
以下の3つのいずれかに当てはまる場合、学校側から留年や公立中への転校を勧められることがあります。
①学業成績が著しく悪い場合
②出席日数が既定を満たさない場合
③素行に問題があり改善の見込みがない場合
私立の学校は営利企業なので、せっかく入学した生徒はなんとか卒業させたいと考えています。
そのためある程度は補習や追加の課題でフォローしようとしてくれるのが一般的です。
しかし、それでも改善が難しいと判断された場合は留年になります。
4. 留年しないためのおすすめの勉強法
中学校で留年の憂き目にあわないためには、何より学校の勉強にしっかりとついていく必要があります。
私立中学校では公立とは異なる教科書を用いる科目もあり、習うスピードも速いのが一般的です。
そのため「予習・授業・復習」のサイクルをしっかり回していかないと、小学校までは勉強が得意だった生徒様であっても、ついていけなくなってしまう危険性があります。
ここからは、私立中学校に通っている生徒様におすすめの勉強法を紹介します。
①つまずきやすいのは圧倒的に「英語・数学」
公立中学校と私立中学校で最も進度に差があるのが「英語・数学」の2教科です。
この2教科に関しては採択教科書から異なる場合も多く、仮に同じものを使っていたとしても授業のスピードが公立中よりもはるかに速いのが一般的です。
英語と数学に共通する特徴は2つあります。
(1)中学入試のときにはなかった科目である
英語も数学も、中学入試には登場しない科目です。
最近は英語を利用した入試を採用する中学校も増えてきていますが、それでも多くの生徒様は「国語・算数・理科・社会」のうちの2科または4科の勉強をしてきたことでしょう。
数学も、正負の数を使いこなしたり、文字を使った計算が増えたりして、算数の頃と比べると抽象的な概念を取り扱う科目に変わっています。
そのため、中学校に入ってからこの2教科のスタートダッシュに失敗してしまう生徒様は少なくありません。
特に、中学校に入る時点で英語に対して恐怖心を抱いている生徒様が多いように感じます。
「英語も数学もみんな1から同時にスタートだから心配はいらない」ということを、ぜひ保護者様からも伝えてあげてください。
(2)積み上げ式なので一度つまずくと苦しくなる科目である
英語と数学の最大の共通点は、理解度が積み上がっていくタイプの科目であるという点です。
たとえばbe動詞と一般動詞の区別がつかないまま3単現のSを習っても、正しくdoesを使うことはできません。
同様に、正負の数の計算が正しくできないのに方程式を習ったところで、正解を導くことはできませんね。
毎回の学習をしっかり理解していかないと、先々苦しくなってしまうのが英語と数学の大きな特徴なのです。
②生徒様が行うべきこと
生徒様はとにかく「予習・授業・復習」のサイクルを確立し、学校の授業内容に置いていかれないように努めましょう。
【英語】
・教科書の英単語の読みや意味は先に覚えておく
・解説のページにもさっと目を通しておく
【数学】
・最初の例題部分を自分なりに理解しておく
・解答と同じ手順で解けるように練習しておく
どちらの科目も、授業で習う前に「なんとなく読める、分かる」状態にしておくとかなり楽になります。
授業では「なぜそうなるのか」という理屈の部分を学び、復習で完全に定着させるイメージです。
③保護者様にできること
中学入試のときにはさまざまな面で保護者様のサポートが必要でしたが、生徒様が中学生になってからは裏方としてサポートに回っていただきたいです。
生徒様本人が自分から質問してくる場合以外は、具体的な学習内容に関しては本人に任せましょう。
中学生に必要なのは、規則正しい生活を維持するためのルール・環境づくりです。
①勉強する時間と遊ぶ時間を分ける
②スマートフォンの使い方に関して約束を決めておく
③夜更かしにならないよう生活リズムに関する声掛けを行う
④いよいよ勉強が分からなくなってきた場合は、私立中学校のカリキュラムに対応する塾を探す
意外と大変なのが④の塾探しです。 「家の近くにあるチェーンの個別指導塾」などでは、体系数学やNEW TREASUREといった私立向け教科書の指導経験がある講師は少なく、指導ノウハウも蓄積されていない場合があります。
保護者同士のネットワーク等を駆使して、生徒様に合った講師とカリキュラムのある塾や家庭教師を選んであげてください。
まとめ|留年する・しないに関わらず中学校の学習内容はしっかりと
ここまで、中学生の留年について解説してきました。
公立中学校にお通いの生徒様が留年になることは、原則ありません。
しかし、私立中学校に通っている生徒様については、状況次第で留年を言い渡される可能性があります。
そうなってしまわないように、普段から予習に取り組み、真剣に授業に臨むことが大切です。
保護者様からは、生徒様がしっかり学習に取り組むための環境づくりと、必要とあらば塾探しという形でのサポートをしてあげましょう。
【参照】
※1:文部科学省「 義務教育に係る諸制度の在り方について(初等中等教育分科会の審議のまとめ) 」
※2:文部科学省「学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)施行日: 令和六年四月一日」
※3:文部科学省「(参考)履修主義と修得主義、年齢主義と課程主義」
※4:文部科学省「中央教育審議会初等中等教育分科会(第143回)」
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