なぜこの問題は良問なのか?
初めに断っておくと、この問題は難しい問題というわけではありません。むしろ、難問揃いの整数問題の中でも易しめであるといってもいいでしょう。ですがなんといっても(2)の「あなたの好きな自然数nを一つ決めて」「g(n)の値をこの設問におけるあなたの得点とする」という言葉。とっても魅力的です。
そうなると考えたくなることが一つあります。「どうやってこの問題の得点を最大化しようか……」ということです。もちろん点数は貰えるだけ貰った方がいいですし、ひょっとしたら計算が難しくなるほど点数が増える仕掛けでもあるんじゃないか、と考えたりするのも不思議ではないと思います。しかし本当にそう上手くいくものなのでしょうか……
この問題を解くために
必要な考え方
設問が2つに分かれているため前半の(1)から見ていきます。「すべての自然数nに対して」とありますから、問題の指示通りに数学的帰納法を用いるだけで終わりです。これに関しては2や3を代入して具体的に検証する必要すらないでしょう。
問題は(2)です。もちろん「自分の得点を最大化できる」nを選びたいです。ですがこの段階ではなんの見当もつきません。そこで先ほど解いた(1)を使います。g(n)の定義を見ながら、n=8の場合を考えてみましょう。

上の画像のように、g(8)=g(2)となっていることがわかります。f(n)を直接変形するのは大変なので、一度合同式を用いて考えています。
同様に計算すると、g(n)=g(n+6)となっていることが容易にわかります。実際の答案はnの値を決めてから答案を書き始めるので、g(n)=g(n+6)であることをわざわざ示す必要はありません。そして、これを用いるとnは1,2,3,4,5,6の6通りに絞れることがわかります。
それでは以上の6通りの数の中から、「好きな数字」を選んでいきます。といっても、たった6通りなので全部代入していけば最大のg(n)は得られそうです。しかし、ここに出題者の仕掛けた罠があります。結論から言うと、ここでは6を代入すると点数が最大になります。
というのも、こういう選択肢が数個で、しかもナンバリングがされているタイプの問題は受験者の側が小さい数字から調べてしまいがちです。そこを見越して出題者はたいてい後ろの方に正解を忍ばせています。なので、こうした問題はどうせn=6から調べるのが正解だろう、と思って調べたほうがいいのです。では解答をお見せします。
点数が最大になる解答
解答はこちらです。



ここからは解答をまとめる際の注意点です。数学的帰納法を用いて解答を書く際は、はっきりと「数学的帰納法により証明する」という文言および、「仮定する」という言葉を書きましょう。大学入試の採点者は数百人分の解答を採点する必要があります。ですから、彼らが一個一個の解答にかける時間は短いと考えるのが自然です。
つまり、採点者に短時間に確実に伝わるような解答が必要になります。そして、数学的帰納法の場合、上に挙げた2つの言葉があるかどうかで採点者は判別をしていると言われています。裏を返せば、この2つの言葉を欠かした解答はすべて0点です。絶対に書き忘れないようにしましょう。
また、関数f(n)の変形にも注意です。f(n)は余りの関数ですが、整数a,bに対して$$f(a)+f(b)=f(a+b)$$は一般的には成り立ちません。例えばa=6,b=1とした場合、左辺は7になる一方右辺は0になります。
そのため、一度f(n)から離れ、合同式や剰余類を利用することによってこの問題を回避することになります。f(n)を直接変形することは避けましょう。
※この部分について外部の方からご指摘を頂いて修正しております。修正を頂いた方に感謝するとともに、以前のバージョンは誤っていたことをお詫び申し上げます。
種明かし・この問題の真の恐ろしさ
以上のようにn=6で解答を作れば点数が最大になり、(2)で18点がもらえます。ならn=6以外で解答を作ったらどうなるの?と思われるかと思います。残っているのはn=1~5の5パターンですので、ここからはそのn=1~5での解答をお見せします。


どうですか?これがこの問題に隠された恐るべき罠です。n=1から順番に調べていってもずっと、「正解しているのに」0点になる答えしか出てきません。この問題設定だからこそできる究極の意地悪といえるでしょう。
そして、nが小さい方から愚直に数え続けていると0点の解答を出し続けたまま時間を浪費し、他の問題に回す時間がなくなるという事故が起きます。(1)の結果を応用せずにn=1から手あたり次第に代入していく、というのが一番最悪です。どこかの段階で「こんなことでは点が取れない!」と気付いてリカバリーする必要があります。
それとそもそも点数が青天井、なんてことなど入試の世界にはほぼありません。一般入試の場合、減点法での採点しかありません。そうした一般的な常識を踏まえ、「これは最大値を求めることに帰着するしかないだろう」と即座に考えることのできる、ある意味でのずる賢さが入試を突破するために必要になることもあるのです。
入試の出題者の心理を読むには?
上のような罠は数学によくある「〇〇の法則の適用条件を満たしていないからこれでは答えにならない」というようなものではなく、明らかに出題者の悪意による罠です。こういう罠は割と異質なものですが、入試の出題者は大抵意地悪です。そうあっさりとは解かせてもらえません。
なのでここからはよく言う「出題者の心理」をどうやって読めばいいのか、ということを話します。それこそ入試の国語がひたすら出題者の考えを探らないといけないゲームであることは皆さんご存知であるとは思いますが、それが出来る人に話を聞いても大抵「勘」と返されてしまいます。
ではその「勘」の本質とはなんなのでしょう?生まれ持った才能でしょうか?いいえ、そんなことは決してありません。基本的に努力の差です。そして、その努力をどのようにするのかということがこうした「出題者の心理」を読む上手さに直結します。
数学において必要なことは「基礎事項をしっかりと知っておく」ことです。そして、例えば「相加平均・相乗平均の関係が使える条件」や「平均値の定理(数学Ⅲ)を適用する前に確認しないといけないこと」など、「ああこういうところに気をつけておかないとな」と思ったところを炙り出しましょう。なぜなら、そのままそこが狙われるからです。
そこまでやったらあとは淡々と問題を解いていきます。実際に「ここに気をつけないと!」と思ったところに引っ掛からないよう慎重にやっていきましょう。ここで個々人の注意力の差が出ます。こういうことが苦手でなかなか正解にならない、という人も多いかもしれませんが、回数を積むことによって克服できるので焦らず地道にやっていきましょう。
…とは言ったものの、「こんな高度なテクニックがこの程度のことだけで出来るようになるの?」と考えていらっしゃる方は多いかと思われます。出来るには出来るのですが、例えば「気を付けるべきことを炙り出す」ことが一人では難しい、自信が無い、という方も多いかと思いますし、また、一人だけで出題者の心が読めるようになるだけの問題演習を積めない、途中で力尽きてしまう、という方も実際多いです。
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