1. SAPIXの国語|カリキュラム概要
SAPIXの国語のカリキュラムは、読解力と思考力を徹底的に鍛えることを目的に設定されています。
学年ごとに段階的に難易度を上げながら、文章を深く読み取る力と、自分の考えを論理的に表現する力を養います。
Aテキストでは語彙力・文法知識・短文読解のスキルを磨き、Bテキストでは長文読解と記述力を重点的に強化します。この2種類のテキストを組み合わせることで、記述問題が中心の進学校から、スピードと正確性が求められる附属校まで、さまざまな入試問題に対応できる力を身につけられます。
① SAPIXの授業の進め方
SAPIXの授業はA授業とB授業の2種類で構成されています。
(1)A授業
授業の冒頭に、デイリーチェックテスト(小テスト)を実施します。その後、Aテキストを使い、語彙や文法、2~3ページ程度の短文読解を学習します。
デイリーチェックテストはあらかじめ範囲が指定されているため、高得点を取れるようにしっかり対策しておきましょう。
(2)B授業
A授業の後は、Bテキストを使用するB授業に移行します。
B授業では、8~10ページの長文読解に取り組みます。
SAPIXのBテキストは、設問の大半が記述式であることが最大の特徴です。。
また、講師がオリジナルの設問を作成することもありますが、その場合もSAPIX独自のメソッドに基づいた作問が行われています。
②SAPIXの授業の大きな特徴
SAPIXの国語の授業には、他の塾とはまったく異なる大きな特徴が3つあります。
(1)テキストは当日配布
SAPIXの授業は「授業の場で初めて知る・初めて読む」ことを重要視しているため、テキストの事前配布は行いません。
他塾の場合、事前に本文を読んでしまう生徒様や、模範解答を見てから授業に臨む生徒様がいるのが現実です。SAPIXでは、こうした事態を防ぐと同時に、「初めて学ぶことの楽しさ」を大切にしています。
(2)記述力を何より重視する
国語のBテキストの問題は、ほぼすべてが記述式です。
これは、桜蔭や武蔵など記述力を重視する学校の入試対策でもあるのですが、SAPIX側の目的はそれだけではありません。自分の感じたことや考えたことを的確に文章化することで、子どもたちの論理的思考力を育んでいるのです。
(3)記述式問題の解答の採点基準が明確である
Bテキストの模範解答を見れば、記述問題の採点基準が明確に設定されていることがわかります。
「国語の記述問題には正解がない」と考える方もいますが、中学受験ではそれは誤りです。
SAPIXでは、
・本文のどの部分を参照すべきか
|
といった記述の解法を明確に言語化し、解説に落とし込んでいます。
2. SAPIXの国語の教材の特徴~他塾との違い~
SAPIXの国語の教材は他塾とは異なる独自の特徴を持っています。
ここでは、SAPIXの教材の特徴と効果的な活用方法について詳しく解説します。
各テキストの特徴と、それを踏まえた具体的な学習アプローチを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
①知識や簡単な設問処理のテクニックを学ぶAテキスト
Aテキストでは、語句・文法などの知識事項や、短い文章を読んでテキパキと設問に答えるテクニックを学びます。
一般的な中学入試の国語で出題される、接続語の選択問題や「傍線部の『それ』とは何か?」といった客観的な問題が中心です。
国語は単なるテクニックだけでは対応できませんが、解答の基本的な手順を身につけることは重要です。
Aテキストの文章は短めですが、しっかり全文を読み、論理的に設問へ向き合う力を養う構成になっています。
②本質的な奥深い読解について学ぶBテキスト
Bテキストでは、長文をじっくり読み込み、記述問題に取り組みます。文章の題材は説明文、論説文、随筆、物語文と幅広く、バランスよく出題されます。
Bテキストの大きな特徴は、本文と問題が別冊になっていることです。
まず本文だけを集中して読み、その後に問題に取り組むという、SAPIX独自の学習スタイルが反映されています。
また、Bテキストの問題は基本的に記述式です。
字数指定のあるものもありますが、ほとんどが大きな解答枠のみで、長い解答を書く力が求められます。
そのため、桜蔭や武蔵のような記述を重視する上位校の対策にも適しています。
Bテキストはどのレベルの生徒様にも有用
「うちの子はそこまで上位校を目指していないのに、オーバースペックなのでは?」
「志望校は記述問題が少ないけれど、Bテキストをやる意味はある?」
こうした疑問を持つ保護者の方もいるかもしれません。
しかし、SAPIXのBテキストは、どのレベルの生徒様にも役立つ教材です。
なぜなら、記述問題の採点基準が明確に言語化されており、この解法をマスターすれば、どのような問題にも対応できる力がつくからです。
簡単に言えば、
「長い記述を論理的に書ける子は、短い記述問題にも対応できるし、記号選択問題でも本質的に同じ力を使って解答できる」ということです。
3. SAPIXの国語でつまづく生徒様によくある要因
SAPIXの国語に関する悩みは非常によく耳にします。
教材のレベルが高いことはもちろんですが、そもそも国語は「どう復習すればいいのかわからない」「教え方が難しい」とと感じる教科でもあります。
ここでは、SAPIXの国語で生徒様がつまずきやすいポイントを解説します。
まずはどこでつまずきやすいのかを把握し、その後の対策につなげていきましょう。
①低学年(1~3年生)の要因
(1)文章の長さに圧倒されてしまう
SAPIXの低学年教材は、長めの読解問題が1題で構成されています。
読書が得意な生徒様には楽しく取り組める良い教材ですが、まだ文章を読むことに慣れていない生徒様にとっては、ボリュームが多すぎると感じられることもあります。
特に、読むスピードが遅い生徒様は以下のような状態に陥りがちです。
・読むだけでエネルギーを使い果たし、疲れてしまう
|
このように、文章の長さそのものに圧倒され、負担感を覚える生徒様は少なくありません。
②中学年以降(4~6年生)の要因
(1)文章中に出てくる言葉の意味がわからない
SAPIXに限らず、中学受験生が読む文章のレベルは、学校の教科書より数段高いものです。
4年生であれば5・6年生向けの文章を、5・6年生であれば中高生向けの文章を、そして入試が近づいた6年生であれば一般向けの新書レベルの文章を読まなければなりません。
そのため、言葉の意味がわからないまま無理に解いている生徒様も少なくありません。
大人でも専門外の分野の本を読むときには苦労することがありますが、、国語が苦手な生徒様にとっては、それが日常的に起きている状態だと思っていただければ近いでしょう。
生徒様に本文の音読をさせてみれば、意味を理解しながら読んでいるかどうかをある程度判断できます。
(2)心理的な発達が追いついておらず内容に共感できない
物語文でよく見られる現象です。小学生の心理的な発達速度にはかなりの個人差があります。
そのため、登場人物の心理に共感できず、内容を正しく理解できなくなるケースが頻繁に見られます。
さらに、中学受験の国語では、当該学年よりも上の学年を対象とした文章に触れることになります。
本質的には、国語の問題を解く際に人物の心情に共感する必要はありません。設問は客観的に読み取れば解けるように作られているからです。
しかし、生徒様は普段の読書経験で「人物に共感しながら読む」ことに慣れており、それができなくなると、「難しい、わからない」と感じてしまうことが多いです。
▼SAPIXについていけない際の対策の詳細は以下ページをご覧ください
「「SAPIXについていけない」悩みを解決!原因と対処法を徹底解説!」
「SAPIX準拠のプリバートってどんな塾?評判・口コミ、費用等を解説!」
4. SAPIXの国語で良い成績をとるためのおすすめ勉強法
SAPIXのテストで良い点数を安定して取れるようになると、実際の入試問題に入ってからも苦労することなく演習を進められるようになります。
ここでは、学年別の効果的な勉強法を紹介します。
低学年と高学年では学習内容や求められるスキルが異なるため、それぞれに合った学習アプローチを解説します。
①低学年(1~3年生)の勉強法
低学年では、文章に触れる経験を積み、漢字や言葉を学ぶ習慣を身につけることが最優先です。
(1)テキストの文章の音読をする
毎回配布されるテキストを音読しましょう。
音読時には、保護者様が以下の点をチェックしてあげてください。
・文字を飛ばしたり、加えたりしていないか
|
また、場面ごとに内容を区切り、生徒様にあらすじを話させて、理解しながら読んでいるかを確認しましょう。必要に応じて内容の説明もしてあげましょう。
(2)漢字・ことばの学習スケジュールを立てる
漢字や語句の学習は計画的に行う必要があります。
低学年では、生徒様が自分でスケジュールを立てるのは難しいため、保護者様が計画を作成しましょう。
スケジュールを目につきやすい場所に貼ったり、カレンダーに記入して、生徒様が予定を確認できるようにすると効果的です。
漢字は低学年のうちに「一画一画、とめはねはらいを意識して書くのが当たり前」と感じられるように、根気よく声掛けをしていきましょう。
(3)授業の復習を丁寧におこなう
SAPIXのカリキュラムは復習主義です。授業では初めての文章に触れ、内容を理解したり、問題を解いたりしますが、一度で全てをマスターするのは難しいです。
授業のない日に、国語の復習をしましょう。復習時には、単にマルバツを付けるのではなく、「なぜその答えになったか」を生徒様に説明させることが大切です。
初めはうまく答えられないかもしれませんが、繰り返し質問することで、生徒様は「なぜその答えになったか」を意識して授業に臨めるようになります。
(4)本やマンガ、子ども新聞など活字に積極的に触れさせる
生徒様が本やマンガに興味を示したら、積極的に読ませましょう。
本を読む子の全員が国語の成績が良いわけではありませんが、本好きな子は国語を好きになる可能性が高いです。
対象学年や分野にこだわらず、生徒様の興味・関心を後押ししてあげるのがおすすめです。
また、各新聞社が発行している「子ども新聞」も、活字に慣れるためには有効です。全ての記事を読む必要はありません。生徒様が興味を持ったものを読ませてあげましょう。
②4・5・6年生のAテキスト勉強法
Aテキストに出てくる知識系の事項は、繰り返しテストをして完全に覚えましょう。特に「類義語・対義語・同音異義語・同訓異義語」はSAPIXのテストだけでなく実際の入試でも頻出するので、毎回確実にマスターする必要があります。
読解についても、Bテキストと比べると本文が短めで内容が平易です。理解が曖昧な箇所がないかを丁寧に確認し、知らなかった言葉は調べましょう。
記号選択や書き抜き問題の対策もAテキストで行います。本文のどこに正解の根拠が書かれているかを、生徒様自身が見つけて説明できるようにしましょう。
③4・5・6年生のBテキスト勉強法
Bテキストの復習は少し大変ですが、効果的に進める方法があります。
SAPIXのテキストには詳細な解説がついていますが、実際に授業で講師がどのように解説したかはわからないため、「授業中に先生が話したことをメモする」習慣を生徒様に身につけさせることが最優先です。小学生は普段、自発的にメモを取ることは少ないので、繰り返し声をかけて習慣化させましょう。
復習を行う際には、解答・解説を利用し、採点基準を参考にしましょう。
例えば、物語文で心情を説明する問題であれば、「①背景②きっかけ③心情」の構成で答えさせる問題が多いです。
具体的には、「①意地悪な子だと思っていたA子が②困っている自分にためらいなく手を差し伸べてきたので③驚いた」といった形です。
国語が特に苦手な生徒様の場合、まずは「②きっかけ」と「③心情」を当てられるようにすることを目指しましょう。
模範解答の表現は大人びていることが多いため、生徒様が全く同じ表現を使えなくても心配する必要はありません。大切なのは、似たような内容を同じような組み立てで書けていれば良いという感覚で復習に取り組むことです。
④テストで高得点を狙うコツ
SAPIXの国語の授業は普段A・Bに分かれていますが、テストになると出題形式が混ざるため、形式の変化に戸惑う小学生も少なくありません。テストの前に前回の問題を解き直し、形式を思い出しておくことが効果的です。
マンスリーテストや組分けテストで高得点を狙うコツは以下の4点です。
①大問1~3の漢字や知識に関する問題での失点を抑える
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実は④の書き抜き問題で時間を浪費してしまう生徒様が非常に多く見られます。しかし、やみくもに探しても正解するのは難しく、正答率も低い場合が多いです。具体的な指示を出して、時間配分をしっかりさせることが大切です。
▼SAPIXのクラス分け対策の詳細については、以下ページも併せてご覧ください。
「SAPIXのクラス分けの基準は?クラスアップのための方法も解説!」
「SAPIX組分けテストの対策法とは?効果的な学習方法を科目ごとに解説!」
「SAPIXマンスリーテストの対策法は?家庭内でできる復習のコツをご紹介」
「SAPIXのアルファクラス(αクラス)とは?入る・維持するための対策方法を解説!」
5. SAPIXの国語についていくためのサポート方法
SAPIXで国語を学習する生徒様をサポートするための方法を紹介します。
国語のサポートは一見難しく感じるかもしれませんが、SAPIXの教材は非常に緻密に作り込まれているため、解説を活用すれば家庭でも十分にサポートできます。
ただし、一定の労力と時間が必要となるため、忙しい保護者様には負担に感じることもあるかもしれません。
家庭でのサポートが難しい場合は、中学受験に精通したプロの個別指導や家庭教師を活用するのも一つの手です。特に、SAPIXの問題に詳しい講師や、実際にSAPIXで指導を受けてきた卒業生の講師を選ぶことが理想的です。
①ご家庭内でおこなえるサポート
ご家庭でSAPIXの国語学習をサポートする方法として、以下の手段が考えられます。
(1)本文の音読に付き合う
音読は、生徒様が本文の内容をどれだけ理解しているかを確かめるために役立ちます。
本文の中で知らない単語や言い回しが出てくると、読み間違えたり、イントネーションがおかしくなったりします。
読み方を修正しながら意味を教えることで、徐々に書き言葉特有の表現にも慣れていけるでしょう。
(2)漢字や知識の学習をおこなう
漢字や知識の学習は計画的に進めることが大切です。特に漢字は繰り返し書くことで定着しやすいため、毎日の学習で少しずつ積み重ねていきましょう。
漢字の学習は一度に大量に覚えようとせず、少しずつ進めることが効果的です。「一画一画」「とめ、はね、はらい」など、基本を意識して書かせるようにしましょう。
家庭学習のスケジュールを生徒様が自分で立てるのは難しいため、保護者様が一週間の学習計画を作成してあげると良いでしょう。
スケジュールを立てる際は、無理なく進められるよう予備日を設けておくことがポイントです。急な体調不良や外出などで予定が遅れる場合に、余裕を持たせておくことで、計画通りに進められない場合でも焦らず対応できます。
(3)漢字のマル付けをする
ほとんどの小学生は自己採点が苦手です。「解き終わった!」と思った瞬間に彼らの中では勉強は終わっているからです。
「自分は大丈夫だ」という思い込みから、生徒様自身に採点をさせると、間違えているものにもマルを付けてしまうことがよくあります。
最終的には自分で採点できるようになってほしいですが、しばらくの間は保護者の方がマル付けを行うか、生徒様本人がマル付けしたものをチェックしてあげるとよいでしょう。
(4)授業の解き直しを一緒にする
Aテキスト・Bテキストの解き直しを一緒にやることも有効です。
授業で教わった内容を聞き出しながら、同じ問題に改めて向き合います。Bテキストの宿題は「解き直し」である場合が多いので、皆さん取り組んでいると思います。
ただ、生徒様だけで解き直しをすると「覚えている答えを書いてマルバツを付ける」だけで終わってしまい、意味がありません。
「なぜその答えになるのか」「根拠はどこにあるのか」まで掘り下げるためには、大人の協力が必要です。
②個別指導や家庭教師に依頼できるサポート
SAPIXの復習・解き直しには膨大な手間と時間がかかるため、忙しくて対応しきれないという保護者様も少なくありません。そのような場合には、個別指導や家庭教師の活用を検討するのも一つの方法です。
個別指導・家庭教師を選ぶ際には「中学受験に対応している講師がいるか」を必ず確認しましょう。
個別指導塾は多数ありますが、その多くは高校受験(中学生)を対象としています。
中学受験の国語は「小学生に高度な読解力を身につけさせる」という点から高度な指導スキルが求められます。中学受験指導に携わってきたプロ講師や、中学受験を実際に経験してきた講師がいるかどうか確かめましょう。
また、SAPIXの教材に精通している講師がいると理想的です。
体験授業を受けられる場合は、講師に直接、SAPIX生の指導経験やSAPIXに通った経験の有無を聞いても問題ありません。せっかくお金を払ってプロに任せるのですから、納得のいく講師を見つけて、安心して任せましょう。
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まとめ|SAPIXの国語で「読む力」と「解く力」をバランスよく伸ばそう
SAPIXの国語のカリキュラムや教材の特徴、つまずきやすいポイント、対処法など幅広く解説してきました。
中学受験用の国語教材はたくさんありますが、SAPIXほど丁寧に作り込まれた良質な教材はほとんどありません。
中学入試合格のためだけでなく、日常生活において必要となる「読む力」と「解く力」を養う非常に優れた教材です。ぜひ有効に活用し、生徒様の力を伸ばしてあげてくださいね。
SAPIXの国語の教材を正しく活用するために、本記事の内容を参考にしていただければ幸いです。
▼SAPIX他科目のおすすめ勉強方法については、以下ページをご覧ください
「SAPIX算数のおすすめ勉強法!家庭内でのサポート方法も解説!」
「SAPIX理科のおすすめ勉強法!家庭内でのサポート方法も解説!」
「SAPIX社会のおすすめ勉強法!家庭内でのサポート方法も解説!」
▼当会では、SAPIX生への指導に特化した家庭教師をご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
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